短い文章
□まるで合わせ鏡のよう
1ページ/1ページ
よく似ていると思った。
佐久間が言っていた俺とは、彼の事だ。
よく、似ていた...昔の俺に。
DNAが同じと言う訳ではないので流石に声まで一緒という訳ではないが。
俺よりも少し低い位置で結われているドレッドも、臙脂色のマントも、色違いのゴーグルも、動きが、あの妙に小馬鹿にした様な笑みが、昔の俺に似ていた。
色違いの赤いゴーグルは影山が渡したに違いない。
俺へのあてつけか。
不思議と色違いの俺には憎しみなんて感情は湧かなくて。
影山に付いていた不動をあんなにも警戒し、憎んだにも関わらずだ。
色違いの俺を憎めないのは、不動同様に彼もまた、影山から離れていくと思っているからか、
それともただ単に、俺自身と似過ぎた彼を、俺と重ね、歪んだ自己愛の表れなのか。
だとしたら俺はとんだナルシストではないか。
性質が悪い。
まるで合わせ鏡のよう
(合わせ鏡は、)
(とても不吉なものだと聞いた。)
.