短編・中編book
□魔女と笛吹男と二人の子供と
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それはある日のことなのです。
魔女はいつものように料理を作っていました。
食べ物が少なくなり始めているという状況には全く似合わない、素敵なお菓子が出来上がりました。
なぜなら彼女は魔女でしたから、材料がなくても魔法で出せたので問題なかったのです。
そして彼女はいつものように彼の帰りを待ちました。
物語は静かに動き始めていました。
しばらくすると彼が帰ってきました。
しかし帰ってきた彼は二人の子供を連れていました。
「ただいま」
「おかえりなさい。その子達はどうしたの?誘拐してきたの?」
魔女は笑いながら問いかけます。
彼も笑いながら答えました。
「似たようなものかもね」
二人はそれ以上は会話を続けず、『お菓子』に目を奪われている二人の子供を見ました。
二人は分かっているのです。
この子供達がどこから来たのかを。
「さあ、二人とも座ってちょうだい。一緒におやつをどうかしら?」
魔女は優しく問いかけます。
二人の子供は互いに顔を見合わせ、少し悩んでから椅子に座りました。
魔女は優しく微笑み、二人の前にお皿とフォークを並べました。
それを見ていた子供の一人が魔女に問いかけました。
「あの・・・『それ』は何?」
子供達は『それ』を知らないわけでも分からないわけでもないのです。
しかし満足な食事も出来なかったであろう子供達は、今目の前にある『それ』が何かを問いかけずにはいられなかったのでしょう。
「それはお菓子で作ったお城よ」
魔女はやはり優しく答えました。
「さて、どこから食べる?」
微笑みながら問いかける魔女に、二人は目を輝かせて答えました。
二人が夢中になってお菓子を食べていると、男が魔女に聞きました。
「今日はお話しはないのかい?」
「あるわ。聞きたい?」
悪戯っぽく笑いながら魔女は聞き返しました。
それに男は頷き、子供達は首を傾げました。
「それは昔どこかであった物語、題名をつけるなら『灰かぶり姫』」
魔女は時々こうして、作った料理に縁のある話をしました。
それは魔女が過去に関わったことなのか、見聞きしたものなのか、全くの作り物なのかは彼にも分かりません。
彼と子供達は魔女の話に聞き入りました。
魔女の話が終わり、子供達もお菓子を食べ終えたころ魔女は子供達に聞きました。
「あなた達はどうして彼と一緒にいたの?」
その問に二人は顔を見合わせ、話し始めました。
内容はこういうものでした。
二人がいた国では子供や国の偉い人達を怒らせたりした一部の大人達を働かせ、他の大人達はただ楽をしていました。
しかし労働は過酷で、まともな食事もほとんど出ず、みんながみんな苦しんでいました。
最近多発している自然災害で食べ物が少なくなっても彼らは変わらず子供達を働かせるばかりで、自分達は楽をするだけでした。
そして今日、森の中で仕事をしていたら甘い匂いがして、探していたら魔女の家の前に着き男に見つけられたのだそうです。
魔女と男は顔を見合わせ、一つ頷きました。
「それは大変だったわね。もし疲れていたら部屋を貸すから休んでいいわよ?大丈夫、他の人達は必ず助けてあげるから」
魔女は優しく微笑み言いました。
二人は顔を見合わせ、魔女に尋ねました。
「「他のみんなを助けてくれるの?」」
魔女と男は優しく微笑んだまま頷きました。
「もちろんよ。明日から他の人達を助けるわ。ただし、二人にも協力してもらうからね?」
そう言って魔女は悪戯っぽく笑いました。
それに安心した二人は案内された部屋に着くとすぐに眠ってしまいました。
二人の子供が眠った後、魔女と男は話し始めました。
「どうやってあの国から他の人達を助け出すんだい?」
「簡単よ。あなたの笛と私の魔法があれば」
「なるほどね。でもいいのかい?」
「今回のことは人助けだからいいのよ」
「そうか。じゃあ頑張るとしよう」
「ええ、そうしてちょうだい?」
魔女はどこまでも優しく彼に微笑み、部屋に戻る彼を見送りました。