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□Together
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いつもは料理のできるハッピーしか使わないキッチンに、珍しくナツがハッピーとともに何やらキッチンで作業をしていた。
ナツの家の中に、甘い菓子のような匂いが充満する。
それもその筈。
なんせ二人は互いに手伝い合い(ほとんどナツが手伝ってもらっているが)、チョレートで菓子を作っている最中なのだから。
「ナツー、出来たぁ?」
「おう!完璧だっつーの!!」
今日は世間でいうバレンタインという、男女でチョレート菓子を交換する日。
普段のナツならば、こういった行事には興味はないのだが、今回はチョレート菓子を作ってみたいと、ハッピーに頼んで二人で作る事になったのだ。
言っても、ナツは自分で作って自分で食べる、という何とも勝手な予定だが。
ハッピーがナツがちゃんとチョレート菓子を作れているのか、確認するように話し掛ければ、ナツは笑顔で手元のボウルをハッピーに見せつける。
しっかりとチョレートは溶かされているようだ。
「じゃ、これと混ぜて」
「らじゃっ」
ハッピーの指示に、ナツは楽しそうに着々と作業を進めていく。
二人が今作っているのは、フォンダンショコラ。
何を作ろうかと、相談しながら料理本を開けば、ナツが一番に指を指した菓子だ。
普段から料理をしないナツだ。
いざ作ろうとすれば、材料は目分量で入れようとするは、自身の炎でチョレートを温めようとするはで、初めの方はいろいろな意味で大変だった。
だが、今はちゃんとハッピーの指示通りに作ってくれるものだから、なんとか上手く作れていけている。
材料を混ぜ終えたナツは、側で見ていたハッピーに問い掛けた。
「もう後は温めるだけだよな?」
「あい。あ、でもナツの炎で温めちゃ駄目だからね?」
「分かってんよ!」
任せとけ。
とでも言うようにガッツポーズをし、ナツはフォンダンショコラを手に、温めるために火の魔水晶が設置してあるオーブンへ持って行った。
後は焼き終わるのを待つだけ。
「手伝いサンキューな、ハッピー」
「あい!ナツも頑張ったね。自分のために」
一言余計なハッピーに、ナツは眉を寄せた。
「別に自分のためだけじゃねぇよっ」
「ん?なに、なんか言った?」
「何でも!!」
何故か頬を薄らと紅潮させ、ナツはキッチンの掃除をし始めた。
ハッピーも手伝おうとしたが、ナツに大丈夫だと言われたので、大人しくリビングで一匹、ナツとフォンダンショコラを待つ事にした。
ナツは不器用ながら、なんとか片付けると溜め息をつき、リビングに戻った。
と同時に、焼き終えた音が家中に響き渡る。
「出来たみたいだぞっハッピー!」
「オイラ、お皿持って来るね」
ハッピーが持ってきた大皿に、フォンダンショコラを数個並べて置く。
焼きたてのそれからは、美味しそうな匂いと、うっすらと湯気を立たせている。
「上手く出来て良かったね。ナツ」
ハッピーが手伝ったにしろ、ナツにしては上出来の出来栄えだ。
笑顔を浮かべるハッピーに、ナツはフォンダンショコラを少しフォークで掬うと、ハッピーの顔に持って行った。
ハッピーの瞳が、キョトンと丸くなる。
「て、手伝ってくれたお礼・・・っつーか・・・ハッピーにも食って欲しいっつーか・・・・」
小声でもごもごと喋るナツに、ハッピーは一瞬呆けたが、直ぐに笑みを浮かべると差し出されているフォークを口に含んだ。
ふっくらとしたケーキの感触と、トロリとしたチョレートの感触。
口いっぱいに甘い味が広がり、とても美味しい。
黙ってフォンダンショコラの味に堪能していると、黙っているハッピーに不安を感じたのか、ナツが眉を下げながら首を傾げた。
「ど、どうだ・・・・?不味い、か?」
「ううん。美味しいよ!」
ハッピーの言葉に、ナツはさっきとは打って変わって笑顔になると、自分もフォークでフォンダンショコラを掬い、一口食べた。
「んめぇっ!」
幸せそうに笑うナツに、ハッピーは少し悪戯心が生まれ、ナツがたった今口に含んだフォークを指差した。
「ナツ、それオイラと間接キスだよね」
「んな?!」
さり気なく言ってみたつもりだったが、ナツには効果は抜群らしく、瞬時に耳まで顔を真っ赤に染め上げた。
それが可笑しくて可愛くて、ハッピーはさらに追い討ちをかける。
「それにオイラ、ナツにあーんしてもらっちゃったしね」
「な、・・・・あ・・・あ」
恐らく無意識だったのか、真っ赤な顔のナツは、言葉も上手く発せれず、幾度も口の開閉を繰り返している。
ついには羞恥のあまり硬直してしまったナツに呼び掛けると、ハッピーは微笑んだ。
「来年も一緒に作ろうねっ」
「ぅ・・・お、おお」
目を逸らし、フォークで軽くフォンダンショコラを突っつくナツの唇に、ハッピーは身を乗り出し触れるだけの口付けをした。
フォンダンショコラより、甘い。とハッピーは思ったのだった。
end.
愛様、この度はネタの御提供有難う御座いましたm(_ _)m
ご希望に答えられたかどうか、物凄く不安ですが、こんな駄文で申し訳ないです((泣