12/24の日記

19:06
X'mas小説★聖夜という特別な夜/姫神
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遊園地。

いつにもまして今日という日は街のイルミネーションやクリスマスの飾りで彩られた風景よりも華やか。

つーか夜の遊園地とか来たことはないからライトアップされたアトラクションや巨大なツリーが映えて綺麗だと思う。



「デートをしよう」

そんな言葉で誘われた。

抵抗の意思を告げる余儀無く姫川の車で連れられてきた場所は市街から離れた大型遊園地だった。
おまけに姫川の姿は正装。
頭は妙チクリンないつものロールパンだったが。
聞けば、財閥関係のクリスマスパーティーがあったらしいが、いつもと違う姿は気になるしかなくどこか落ち着かない。

午後22時を回ってるのによく開いてるよな。
ああ、クリスマスはそういうものなのか。

そんな事を考えながら遊園地内を歩く。
と、ふいにコートのポケットに寒さ防止に突っ込んでいた手を掴まれ神崎はギクリとした。


「な…なんだよ」

「デートなんだから手を繋ごうぜ」

「なっ、ば…っ人に見られんだろうが…っ」

「さっき交渉したから、この後は貸し切りになる。」

「は?!」


これだから金持ちは…


と、言葉にならない文句を巡らせたが、同時に手を繋がれてしまった。
確かにさっきまで沢山いたカップルの姿が疎らになってきて皆、遊園地の出入口の方へと向かってはいるが。


マジかよ…


馬鹿じゃねぇのか。



悪態吐けば、ただ姫川は笑った。


「本当は神崎の方から腕組んでくれたら最高なんだがな」

「な…っ」

「出来ないだろ。だから手を繋ぐくらい許せよ」

「っ…何だそりゃ」


それから華やかなイルミネーションが気にならなくなった。

気になるのは繋がれた手の熱さ。

姫川の手が熱い。



遊園地のアトラクションに乗る時は離されたけど、それが終われば姫川から手が差し出される。
文句を言いながらもいつからかそれを自分から掴み繋いでやった。

夜の外は寒いもんだ。

だけど今日はまったく寒さが感じられない。


暖かい。


** ** ** **

どれくらい遊園地の中を楽しんだだろう。

ふと、遠くにあったはずの観覧車が視界に入る。


「神崎、次はあれに乗ろう」

「…観覧車、か。おぅいいぜ。」


時計を見ながら姫川が指定した観覧車を神崎は見上げた。

久しぶりに乗るなぁと感じる。


二葉ともそういや来られてないな…。


観覧車の中に乗り込めば扉が閉められた。
ゆっくりと上がり始めた揺れの中で外の景色を見ながら思う。

それは言葉になっていたようで


「こんな時にまでオレ以外のこと考えるのな。」

「あ?いや…あれ、オレ言ってた?」

「ああ…」

無意識にかよ、と向かい側に座っている姫川は目を細め呟いたのが聞こえて。神崎は顔を横に向け風景へと視線を向けた。

暫しの沈黙。

それが何故か気まずい。

「あー…もう、悪かったって…怒るなよな」

「別に咎めてはいない…ただ」

「…ただ?…っ、ちょ…っ」

言いかけ止まった言葉の変わりに、向かい側に座る姫川が身を乗り出して距離をつめてくる。
観覧車が揺れるから派手な動きではなかったが軽く逃れようと身体を動かすも、遅かったようで抱き締められた。

「う…、何だよ…いきな…っ、ん…」

困惑したように神崎は視線を向ければ真顔の表情が近づき口づけられた。

驚きはしたけど、神崎は抵抗は何故か出来なくて、ちゅっというリップ音にゾクリと身体を震わせ姫川の腕を掴む。

「は…っ姫川?」

すぐに離れた唇に乗じて吐息を含み姫川の名前を呼べば、また抱きしめられたから。

神崎は唸る。

だが、深呼吸をした姫川が唇を耳に寄せたと同時、小さく「ただ、嫉妬しただけだ」と告げてくれば肩が跳ねると同じくして顔が熱く感じた。

「今夜くらい…オレだけの事を考えてくれないか?」

「あ?」

「テメェの頭の中にはないオレへのプレゼント」

「おい、プレゼントって…一応、だな…っ」

「今日欲しいのはまずテメェとの時間だったけど。オレの事だけ考えてくれる神崎が欲しい。」

「っ…何だそりゃ」

一応、用意はあると告げる前に強請られ神崎は眉間を寄せる。

「今夜くらい特別…いや、クリスマスを恋人として過ごしたい」

「…っ」

もう過ごしてんじゃねぇか…イヴだけど。

「時が変わる瞬間に…」

「わ、わかったから…っ居てやるから皆まで言うな。恥ぃだろ…馬鹿やろ」

さっきから恥ずかしげもなくベラベラとよく言えたもんだなっ

と、神崎は赤い顔で文句を言いかけたが、姫川の鼓動が抱かれた懐にいれば伝わってきたから文句は止めた。


オレも鼓動はアレだけど、姫川も鼓動が早いのがわかったから…。

何か今日は余裕ない感じに捉えられるから。

「神崎…」

「仕方ねぇ、明日の朝まで付き合ってやるよ」

「…」

承諾しただけ。
なのに、言葉なく姫川は嬉しそうに笑った。



観覧車はゆっくりと廻る。
そんな最中も、姫川に抱きしめられたままで。

神崎は伺うように姫川の顔を見据えれば、まだ嬉しそうに笑みを浮かべたままで言葉と対応に躊躇う。

仕方なく窓の外を照れ隠しに見れば夜景が観えた。

「綺麗だな…夜景」

「…ああ」

ホント、綺麗だな。

心が穏やかになる感じ。


12月25日

テレビかなんかで言っていた。

時が変わる時間。

一緒に居られればそれだけで

幸せ。

よくわからないけど

今はそんな気分に近いかもな、と神崎は思った。


そう…

今夜は特別な日なのだから。



クリスマスはもうすぐ。


時間が変わる頃、たまには好きだと言ってやるのも悪くない


かもな。


Happy MerryChristmas

2013★




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おもちかえりな話になっちゃった。このあと朝までイチャイチャコースですか…中途半端ですがクリスマス2013な話にさせて頂きました。
読んで頂きありがとうございました。

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