ゆめ


□やけに格好良く見えた
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妖しい色のネオンが煌々と輝いている。とっぷり日も暮れ、神室町は昼間とはまた違う顔を見せていた。昼間でさえこの町に来るのは少し遠慮したい所だが、夜なんてなおさら行きたくないスポットナンバーワンだ。道端にいる若い男たちは、バットや鉄パイプを片手ににやにや笑っている。スーツを着た男がうろうろと道行く人々の間を歩き客引きをしている。かなり不愉快だ。

何故こんな町を歩いているかと言えば、私はある人に呼び出しを食らい、その人のもとへ向かう途中だったりする。あまり大きな声では言いたくないが、先日私はヤクザなお二方とお知り合いになってしまった。そして、そのうちの一人に何故だかとてつもなく気に入られ、何度も何度も何度も……ご飯の誘いを受けていた。正直言えば、これ以上関わり合いたくない。しかし、知り合ったきっかけが例のバットや鉄パイプを片手ににやにや笑う若い男たちに絡まれていた所を助けて頂いた、ということもありあまり邪険にできないでいた。

待ち合わせ場所に到着すると、一際人目を引く格好の男が既に待ち構えていた。それが今日の待ち合わせの相手だ。彼の周り数メートルは、混雑した街中だと言うのに誰も近寄っていなかった。ああ、もうすでに帰りたい、なんて思いつつ彼のもとへゆっくり歩を進める。
「真島さん!」
少し遠くから彼の名前を呼ぶと、私に気付いたようで慌てて駆け寄ってきた。

「なまえチャン!来る途中なんもなかったか?」

心配そうに顔を覗き込まれたが、少しだけ距離が近い気がしてさり気なく距離を置いた。はっきり言うと真島さんの顔は怖い。一番の要因は、彼の片目を覆う眼帯だろう。
真島さんは、私が少し距離を置いたことに気付いたのか、すぐにぱっと離れていった。

「スマン、何もなかったみたいで、安心したわ。この間みたいなことあってもアカンしな。」

にこっと笑った顔は人懐っこい笑みで、見かけによらず良い人なんだろうなと思う。でなければあの時助けて貰うことなんてなかっただろう。それには本当に感謝しなければならない。

「大丈夫ですよ。今日はどこへ行きますか?」
「んー、なまえチャンは何が食いたい?」
「そうですね、お肉とか?」
「あ、せや、旨いハンバーグ屋知ってんねん。どうや?」
「いいですね。そこでお願いします。」
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