ゆめ


□おやすみなさい
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薄暗い中、意図的に閉じていた目を開いた。ああ、今日もか。静かな部屋で時計の秒針だけがやたら大きく響いて言いようのない不安に襲われ、枕元の携帯電話を見た。時刻は夜中の三時を回った頃、布団に入ってから二時間以上経過していた。

ごろりと寝返りを打てば真っ白な壁があるだけだ。ここ最近こんなことの繰り返しで、イライラが不眠を呼び不眠がまたイライラを呼んでいる。次こそは寝よう、と意気込み両目を閉じると次第に夢と現実の間へと落ちていく。でも、再びパッと意識が覚醒し、時間を確認すれば今度は五時過ぎだった。

「はあ……」

中途半端だけどこのまま起きて支度でもしようともそもそ布団から出る。眠たくてぼーっとする頭で今日のスケジュールを確認する。雑誌の取材が二つにラジオのゲストが一つ、最後に事務所に寄る、以上。うん、今日も頑張ろう。

◇ ◇ ◇

本日最後の仕事である事務所での打ち合わせを終えようやく今日が終わった。疲れて凄く眠たいけど、きっと布団に入れば目は冴えてまたあの魔の時間がやって来ることだろう。できることなら眠気のあるこの瞬間にこの場で横になって眠ってしまいたい。でもそんなわけには行かず、事務所を出て敷地内にある寮への道のりを歩く。すると、少し前を見慣れた背中が歩いているのが見えた。

「真斗くんっ!」

名前を呼ぶと真斗くんはこちらを振り返り、私だと認識するといつもの爽やかな笑みを浮かべこちらへ駆け寄ってきたけど、一瞬で眉間に皺を寄せた。

「ど、どうしたの?」
「どうしたの、はこちらの台詞だ!どうしたんだ、顔色が悪い……。」

そっと頬に手を沿えられ、親指がゆっくり目のしたをなぞった。メイクで隈は消し去ったはずなのに、何で分かったんだろう。今日は映像のお仕事がなかったから、若干薄目のメイクではあるけど。

「そう、かな……?最近眠れなくて、あはは……。」

あまり心配をかけたくなくて誤魔化そうと曖昧に笑ってみるけど、真斗くんの眉間の皺が深くなるだけだった。
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