記憶を継ぐ者

□プロローグ
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「!」



人の気配と血の臭いがした
真っ直ぐ宿に戻ろうとしていた途中突然立ち止まったオレにアルは不思議そうに



「どうしたの兄さん?宿はそっちじゃないよ?」


「アル。お前ちょっとここにいろ」


「え!?ちょっと兄さん!!」



オレは構わず気配がある方に向かって走り角を曲がった
薄暗い路地裏、街の光は微かに届くがそれでも暗闇に近かった

血の臭いをたどりゆっくり近付く
動く気配はない

最悪の事態が頭を過ると偶然にも月明かりが路地を照らした


「なっ!」


月明かりに照らされ光金茶色の長い髪に一瞬見とれたがすぐに我に返って、座り込んでいる奴に声をかける



「おい!大丈夫か!」



体を触ると冷たいが呼吸はしている
頬を叩いても意識は戻らないが最悪の事態ではないことにホッとしながらよく観察すると
あちこちに傷があり血がにじんでいる



「おい!しっかりしろ!」



返事がない
顔色は悪くぐったりとしている
これは急がないとヤバいかもしれない



「兄さん!え?ちょ、ちょっとその子怪我してる!」


「こいつ運ぶぞ!」



その場にいろと言ったが追いかけてきたアルに詳しい説明はせずに急がないとヤバいと言うことだけ伝える
意味は汲み取ったらしく力強く頷く
アルが運ぼうと抱き上げた時気づいた



「(こいつ左足が無い!)」



カツンと聞き覚えのある何か落ちた音がして下を見ると小さなネジが一本落ちていた


そこで改めて気づいた




こいつの左足は



機械鎧だ…





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