記憶を継ぐ者

□二人の錬金術師
1ページ/6ページ


〔この地上に生ける神の子らよ

祈り信じよされば救われん太陽の神レトは汝らの足元を照らす

見よ、その見座から降って来られ汝らをその諸々の罪から救う

私は太陽神の代理人にして汝らが父〕



なんだろこれ?


エドさんたちと初めて来た街で何やらラジオから意味のわからない放送が流れている



「………ラジオで宗教放送?」


「神の代理人…って、なんだそりゃ?」



ボクらは店で食事しながら放送を聞いていた
どうやら宗教放送というものらしい



「いや、俺にとっちゃあんたらの方が「なんだこりゃ」なんだが…あんたら大道芸人かなんかかい?」



店のおじさんの大道芸人という言葉にエドさんが飲んでいたものを思わず吹き出してしまった




「エドさん…」


「あのなおっちゃん、オレ達のどこが大道芸人に見えるってんだよ!」


「いや、どう見てもそうとしか…」



いろんな人の目線が集まってるし後ろでは通りかかった子供がアル見てすげーとか言ってる

まぁ、大道芸人と間違われる要因はほぼほぼアルの気がするけど言わないでおこう

ボクはたくさんの視線が気になり何となくエドさんが顔を隠すために買ってくれた帽子を目深に被った



「ここいらじゃ見ない顔だな旅行?」


「うん。ちょっとさがし物をね」



ボクはエドさん達が何を探しているのか知らない

二人の事情だから聞かない方がいいと思ってるから



「ところでこの放送なに?」


「コーネル様を知らんのかい?」


「…誰」


「どちら様ですか?」


「コーネル教主様さ。太陽神レトの代理人!」


「「奇跡の業」のレト教、教主様だ」


「数年前にこの街に現れて俺達に神の道を説いてくださったすばらしい方さ!」



街の人達が口々にその教主様のことを褒めたたえていた

太陽神レト?知らないな…



「…って聴いてねぇなボウズ」


「うん。宗教興味ないし」


「ボクも宗教とかわかんないです。おじさんごめんなさい」


「いや、謝ることはないよ」


「ごちそーさん。んじゃ行くか」


「うん」


「はぁい。ごちそうさまでした」



お店から出るために立ち上がればアルがお店の屋根にぶつかり屋根の上に置いてあったラジオが落ちて壊れてしまった



「あ」
「あ―――!!!」



ボクやエドさんは問題なかった
いや、成人男性でも屋根に頭が当たる人はそんなにいないと思う
だけど、アルは…背が高いから…



「ちょっとお!困るなお客さん。だいたいそんなカッコで歩いてるから…」


「悪ィ悪ィすぐ直すから」


「「直すから」って…」



ボクもエドさんが言ったことが気になり



「壊れてるのに直せるの?」


「まあ見てなって」



アルがチョークでラジオを中心にして何か書いていた



「よし!そんじゃいきまーす」


「?」


ボ!!


「うわあ!?」



光りと風が出てよく見ると



「な…」


「これでいいかな?」



壊れたラジオが元に直っていた



「……こりゃおどろいた」


「直しちゃった」


「あんた「奇跡の業」がつかえるのかい!?」


「なんだそりゃ」


「ボク達錬金術師ですよ」


「エルリック兄弟って言やぁけっこう名が通ってるんだけどね」



エルリックと聞いて街の人達がざわついた



「エルリック…エルリック兄弟だと?」


「ああ聞いたことあるぞ!」


「兄の方がたしか国家錬金術師の……」


「“鋼の錬金術師”エドワード・エルリック!!」



頷くエドさんだけど



「有名ですね。でも、国家」
「いやぁあなたが噂の天才錬金術師!!」
「あれ?」



みんなエドさんじゃなくてアルの周りに集まってる



「なるほど!こんな鎧を着ているからふたつ名が“鋼”なのか!」


「…」


「あのボクじゃなくて」


「へ?」



みんなの視線がエドさんに集まった



「あっちのちっこいの?」
「誰が豆つぶドちびか―――ッ!!!」


「「「そこまで言ってねぇー!!」」」



がっしゃーっと怒っていろいろひっくり返した



「ボクは弟のアルフォンス・エルリックでーす」


「オレが!“鋼の錬金術師”!!エドワード・エルリック!!!」


「エドさん顔笑っているけど目が怖いですよ」


「し…失礼しました…」


「そういやウィル」


「はい?」


「何かオレに言おうとしてただろ?」


「あ、えっとですね…」



ボクが言おうとしたとき



「こんにちはおじさん。あら、今日はなんだかにぎやかね」



女の人の声が聞こえて話すのを止めた



「おっいらっしゃいロゼ」



ロゼという女の人だった



「今日も教会に?」


「ええお供えものを。いつものおねがい」



今日もって毎日教会に行ってるのかな?



「あら、見慣れない方々が…」


「錬金術師さんだとよ。さがし物してるそうだ」


「さがし物見つかるといいですね。レト神の御加護がありますように!」



ボク達に笑いかけて行ってしまった



「ロゼもすっかり明るくなったなぁ」


「ああ、これも教主様のおかげだ」


「へぇ?」


「あの子ね身寄りもない一人者の上に去年恋人まで事故で亡くしちまってさ…」


「あん時の落ち込み様といったらかわいそうでみてられなかったよ」



あんなに明るそうな人が?



「そこを救ったのが創造神レトの代理人コーネル教主の教えだ!」

「生きる者には不滅の魂を死せる者には復活を与えてくださる。その証拠が「奇跡の業」さ。お兄さんも一回見に行くといいよ!ありゃまさに神の力だね!」



信じる力って凄いな…でも



「「死せる者には復活を」ねぇ…」



「うさん臭ェな」
「信じられません」





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ