桂総受け@

□眼鏡をとるとイケメンになる設定は少女漫画の定番
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「無事、任務完了って感じですね」


万事屋一行。
今、依頼を終え、帰宅中。

「変態ってのはほんと厄介だよなー。
警察の仕事だろーがよー。」

今回の依頼とは、娘がストーカーに遭っているから
犯人を捕らえてくれとのことだった。

「まぁ、そういう小物の事件は警察もあんまり動かないんですよ。」
新八がはは、と笑う。

「いやな世の中になっちまったなァ」
空を見上げる。

その横では神楽が定春とじゃれている。
新八は眼鏡をくいっとあげた。

「あ」
新八が声を漏らした。
「な、何?」
銀時はその声に焦り、顔を戻す。


「げっ、ヅラァ!」

そこには顔なじみの黒い長髪の男と
奇妙なペンギンお化けが立っていた。

「ヅラじゃない、桂だ。
貴様らは一体何をしておるのだ?」
桂が少し顔を傾ける。

「てめーこそ、変装もしないで、何やってんだぁ?」
全く、その通りである。

攘夷志士で指名手配犯。これでも。

「最近、幕府の連中が静かでな。
久しぶりにゆっくりエリザベスと散歩中だ。」
幸せそうににっこり、笑う。
わりと仏頂面な彼の笑顔は珍しい。

横をみると、新八が下を向いて、顔を赤くしていた。
(新八ィ、お前新しい扉開いちゃったのかよ・・)
銀時は少し呆れる。
俺も・・・好き、だけど。
コイツには一生適わないことくらいわかってる。
だから、口に出さない。

「ヅラぁ、エリー!!!久しぶりアルな!」
神楽が定春から飛び降り、桂の方へ駆け寄る。
「リーダー、元気にしておったか?」
「この通り、ピンピンネ!」
と、力瘤を見せる。

ピンピンなのと力瘤は全く関係ないのだが。
さらに力瘤できてないからね、それ二の腕だからね!

銀時は心の中で突っ込む。

本物の突っ込みは絶賛へタレ中なので、やるしかない。

「約束の、酢昆布3個だ。」
「サンキューヅラァ!大好きアル!!」
そう言い、桂に抱きついた。

神楽ちゃぁん!!!!
なんておませな事を!!(違う)



その桂のよこで、エリザベスは無言で桂を見つめている。

何してんだぁ?コイツは。
存在が0に近いじゃねぇか。
新八より薄いじゃねぇか!

嫉妬に近い、文句である。

「てかさ、ヅラ。そいつ、しゃべらねぇの?」
なんとなく、聞いてみる。
「ん?エリザベスか?」
桂の顔がエリザベスに向く。

「俺、あの多毛さん以来、しゃべってるとこ、見たことねぇーぞ」
多毛さんとはあの人気アナウンサーだ。
変てこペットのグランプリ。

「ていうか、桂さんと銀さんは近くでエリザベスの素顔、見たんでしょう?
声より、そっちの方が重要でしょ」
突っ込み復活。
相変わらずちらちら、桂を見ているが。
「いや・・あの後の記憶なくってさ・・」
「そういや、俺もだ。酷くショックだったのは覚えているが。」
いい年こいた男が一生懸命考えている。

「きっとエリーもイケメンでアルヨ!」
ね?というように神楽がエリーを見る。
『てれます』
「マジデレすんな!」

なんなんだ、この未確認生命物体はよ。
あんのモジャが。ヅラにこんなもん渡しやがって。

「桂さん、エリザベスさん。
とりあえず、うちに来ませんか?」

オィィィィイイ!
うちって、一応俺んちなんですけど?!

ていうか、新八積極的・・・。
ヤベーなァ・・。

銀時も少し焦る。

「では、お言葉に甘えさせてもらおうか。
丁度、土産物も持っているしな。
のう、エリザベス。それでよいか。」
桂は腕を組む。

やはり桂はこの生き物を溺愛しているようだ。
わざわざ、エリザベスに許可を求めるとは。
その理由、周りの人は誰一人理解できてないが。

『桂さんについていきます』

なんてやつだ。
嫁気取りか。嫁きどりかァァア?!

銀時の悪戦苦闘はまだ続く。






「さぁ、桂さん。どうぞ。」
新八がスリッパを桂に差し出す。
「すまないな、新八君」
また笑顔を見せる。
今日は機嫌がすごくいいようだ。

「い、いえ。雑用係ですから」
ははは、と笑うその顔はまた、赤く染まっている。

「新八、どうしたアルか?顔が真っ赤ヨ」
酢昆布をかじっている神楽が、顔を傾ける。

「い、いや、なんでもないよ。」

という新八の様子は明らかにおかしいが、神楽はそれ以上気にしなかった。


そして全員がソファに座る。
「んで?おい、エリザベス。お前しゃべれよ。」
「唐突だな、オイ」
新八が銀時を見る。

しかし、エリザベスは困った様子だ。

「エリー、キャラなんか捨てちまえヨー。
気にすんなって」
酔っ払ったおっさんのようにエリザベスに絡む神楽。

「そーだって。中身はどうせおっさんなんだろー?」
銀時が鼻をほじる。
「銀時、貴様なんていうことを言うのだ!
こんなにかわいい生き物の中にオッサンなんぞおるわけなかろう!
ありえんだろう!」

いやいや、お前の頭がありえないから。
どうなってんだ?その頭。
かに味噌でも入ってるんですかコノヤロー。

「何、何がかわいいって?」
銀時はため息をついた。
「俺も、幻聴っぽいのが聞こえたんですが・・。」
新八も少し冷や汗をかいている。
当然だろう。

しかし。
「何言ってるネ!エリーはかわいいヨ!」
「そうだ、リーダー。よく言ってくれた。」
うむ、と桂はうなずく。

「貴様は視野がせまいから、そんなだらしない生活を
送らなければならなくなっておうんだろうが。
そんなことなら攘夷志士にでもなればいいじゃないの、もう!」
「なんで、お母さん口調に・・」
「新八ィ、突っ込みをあきめるな!
こいつの電波は俺一人じゃさばききれない!」
銀時は新八の肩を揺さぶる。


そこへ。
「オイ、万事屋。最近桂を見なかっ・・」
来たのは、副長土方と隊長沖田。
「桂ァァァ、こんなところに・・」
「おいやめろ腹黒ォォォ」

「はっはっは、さらばだリーダー。
銀時、攘夷志士もなかなか楽しいぞ!
ぜひやってみるがいい!」

「こんな状況でも勧誘か!」

立ち去る桂のあとをエリザベスが追う。


あぁ、神様。
いや、だれでもいいから、僕らを救ってください。

切実な思いで祈る、新八と銀時だった。

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