青の祓魔師

□物語の一日
1ページ/5ページ

4月半ば

私はメフィストに許可を貰い

約100年間、閉じ込められた塔から脱出した

もちろん、必要なものはすべて持ってきた

クッションとソファ

絨毯とお気に入りの食器

クローゼットに入ったまま、着替え全部

蝋燭、薬草、本と気に入った香水

後はすべて塔に残してきた

鉛筆はもう既に磨り減って何も書けないから新しいのを買おうと思うし

必要なものはすべてメフィストが買ってくれる

炊事道具は全部厨房で貸してくれるらしい

それに、私には食欲がないし、食べる必要もない

趣味で作ったり、食べたりはするが

何で、趣味になったのかはわからない

しかし、今はそんなことどうでもいい

重要なのはこれからだ





制服の仕立てが終わったというので、理事長室に赴き

ついでに試着してみなさいとメフィストが言うので理事長室で堂々と着替え中なララ

「聞いてなかったけど…寮生活って言っても…私は一般生徒と一緒に生活は出来ないでしょう?」

制服のシャツに袖を通しながら、遠くに距離を置いているメフィストに話しかけた

「そうですね。…それと、ララ、レディが堂々と男の前で着替えをするものでは…」

「てことは、私一人で寮生活なの?」

メフィストの小言が始まる前にララは質問を続けた

「いえ、貴方一人ということではありません」

「…じゃあ、何?上級祓魔師と一緒にってこと?」

それならまだ塔のほうがマシだ、と思いながら制服のシャツのボタンを止めていく

「中級祓魔師とは一緒ですが…まぁ、寮に貴方を含めて、三人ということになります」

「…?まぁ、いいや。私は学校に行けるだけ満足だし!」

そう言いながらララはスカートを足の下から通し、上へぐいっとあげる

チャックを閉め、鏡を向いたとき、ハッとした

「メフィスト、スカート短い!!」

「今はそれが流行なのですよ」

メフィストは暢気に紅茶を飲んでいた





「ドイツから転校してきました、加藤ララと申します。以後、よろしくお願いします」

ララはそう言うと、軽く頭を下げて、クラスメイトに挨拶をした

「じゃ、加藤さんはあの席ね」

そう言って、指差されたのは一番窓際の列、後ろの席だった

転校生用の机の位置はいつもあそこだと決まっているとメフィストに聞いた

席につく前に自分の席の隣の人物が気になった

気になったのは、顔とかではなく、髪の色だ

「私、ピンクの髪の人初めて見た」

思わず凝視しながら、呟いてしまった

その声が耳に届いたのか桃色頭の人は目を合わせ、にこりと笑った

「…っ!」

ララは慣れないことに驚いて、慌てて席についた

朝のHRが終わる頃には、ララは緊張で固まっていた

「あはは、緊張してるん?」

ララとは反対に緊張感のない声が聞こえてきた

さっきの桃色頭の人だ

「ララちゃんやろ?ごっつ可愛えぇなぁ、帰国子女てかっこいい〜なぁ」

次から次へと知らない単語が押し寄せてきて、ララは戸惑いの表情を浮かべた

「あ、あの…お名前は?」

何を話したらいいのかわからなくなった時

メフィストがまず相手の名前を聞けといっていたのを思い出し、聞いてみた

「あ、あぁ、俺な、志摩。志摩廉造ていいます。よろしゅうしたってください」

「しましま廉造…?」

「ブフォっ!ちゃうよ…!志摩、廉造」

あははっと笑いながら廉造は机を叩いている

「志摩廉造…?なんか、聞いたことがあるような…」

「え、ほんまにっ?!俺、ドイツでそんなに有名なん?!」

「ドイツ行ったことあるの?」

「いんやぁ、あらへんよ」

「…??」

いまいち、ララは廉造とは話が噛み合わない様子だった

「あ、坊と子猫さんや。じゃ、ララちゃん」

廉造はそう言って、教室から出て行ってしまった

最近の子についていけるのだろうか、とララはため息をついた





やっと授業を終え、帰宅

だが、その前にララには行くところがある

女子更衣室まで行き、扉を閉め、持っている鍵を回す

開くと見たことのない廊下

天井が高く、暗い雰囲気をかもしだす

早く人が来る前に、と扉を慌てて閉めた

そのまま職員室みたいなとこにいけといわれていたが…どこだかわからない

困っているところに二人組の女子が歩いてきた

「あ、あの」

「…ん?」

二人は驚いて足を止めた

「どうして、一般生徒が此処にいるのよ?」

髪が黒く、凛とした少女が丸い眉毛を歪めた

「道に迷ったのかな?」

ショートカットの大人しそうな子が小声で呟いた

「どうかし…?」

「朴っ!いこっ!!」

黒髪の少女はそう言って、朴と呼ばれた少女の前を歩いて、ララの脇を通り過ぎた

「え、でも…出雲ちゃんっ!」

朴はごめんね、と呟いて出雲という少女の後を追った

「…面白い子達だなぁ」

ララは呆然として二人の背中を見送った
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ