青の祓魔師

□時を録す者あり
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最近、やたら廉造が絡んでくる

最初は嬉しかったのだが、段々と迷惑になってきた

そして、廉造の絡み方について日に日に把握していった

いまでは…少しかわいそうなくらい

「坊は詠唱騎士と竜騎士二つも取るて、また気張ってはるけどな————ララちゃんは何取るんー??」

後ろの席にいるララにわざわざ廉造は声をかけた

「…なんで、そんなこと教えなきゃならないの?」

「え〜えぇやんー教えてくれたってぇ〜!」

廉造はそういいながら、近づいてきたララの腕にしがみついた

それを振り払い、勝呂に席を詰めてもらい、横に座った

「そーいや…奥村先生も医工騎士と竜騎士二つ取ってはるよ?」

「ふーん…あいつスゲーな…」

燐は苦笑いで子猫丸に相槌をうった

「俺は何にしよーかな…ドラグーンてなんだ?」

頭を抱えながら燐はそうひとりごちた

その疑問に半分ヤケクソになりながらも丁寧に勝呂が解説していった

…じゃあ俺は騎士だな…ララはどうすんだ?」

燐は用紙に書かれた騎士の文字を丸で囲んだ

「うーん…別になんでもいいんだけど、詠唱騎士はダメなの」

「なんでや?」

廉造は身を乗り出して聞いてきた

その行動がうざかったので、無視した

どうして詠唱騎士にはなれないのか、それはもちろん吸血鬼のハーフだからだ

「だから、私は騎士か…医工騎士か、竜騎士かで悩んでるんだけど…」

そういいかけるとふと雪男の顔が浮かんだ

「雪男が…竜騎士と医工騎士ていうからやめた、騎士にする」

ララはふて腐れたような顔でそう言った

「あっれ?ララちゃん、若先生のこと嫌いなん?」

「…嫌い」

小さな声でそう呟くと、席を立ってどこかへ言ってしまった

「今、珍しく俺の質問に答えてくれましたよぉお!!」

廉造はそう言って子猫丸の肩を揺さぶった

「雪男と寮じゃ普通に話してるのにな」

「あぁん、そうなんか?じゃあ、なんで…って、えぇ?!」

勝呂は燐の言葉に目を丸くして叫んだ

それと同時に子猫丸を揺さぶっていた廉造の手も止まる

「あ、やべっ」

雪男には秘密にしろって言われてたのに、うっかり口を滑らしてしまった

燐はあせって自分の口を両手で塞いだ

「い、いいい、今、なんて言ったん?お、奥村君」

廉造は驚愕な表情で燐を見て言った

「あ、あはは、ははは、じゃ、じゃあなっ!!」

燐は用紙を持ち、席を立って急いで教室から出ていった

(…そういえば、なんでララは、俺達と一緒の寮にいるんだ?)

燐は廊下を歩きながらそんな疑問を浮かべた





【魔法円・印章術】

塾の教室にネイガウス先生が大きな魔法円をチョークで書き、それをみんなで囲みこむような形になった

「"デュポエウスとエキドナの息子よ、求めに応じ、出でよ"」

ネイガウスは魔法円に血を垂らし、言葉を並べる

すると、煙をまいて何かが魔法円から這い上がるように出てきた

硫黄の匂いが充満する中、ゾンビのような悪魔が出てきた

「あれ、屍番犬か……は…初めて見たわ…」

勝呂はいうにはナベリウスとかいう悪魔らしい

ネイガウス先生は続けて、魔法円の才能を調べるためテストすると言った

一番初めに動いたのは、あの丸い眉毛の子、出雲という少女だった

「"稲荷神に恐み恐み申す、為す所の願いとして成就せずということなし!!"」

意味がさっぱりわからない言葉を言っていたが、出雲は白狐を二体も召喚した

「出雲さん、すごーいっ!!」

ララは、思わず関心の声を上げた

「ふふん、当然よ」

すっかり気を良くした出雲はララに愛想よく笑った

「貴方もやってみたら?」

半分は皮肉なのだろうけれど、そこは受け流し、やってみる、と呟いて血を魔法円の紙に垂らした

それを見て、吸血鬼の血で召還できるものなのだろうか、というかしてもいいのかと不安になった

ちらりとネイガウス先生を見るがなんともない顔をしていたので、再び紙に向き直った

『———————…もの』

ふと、頭の中に男性の声が流れた

「"人の心を映し、人の時を録す者、我、汝の助けを求める者!"」

頭に流れた言葉どおりに言ってみたら、思ってもいなかったが、召喚できてしまった

魔法円の略図を描いた紙からポンッと一冊の分厚い本が飛び出てきた

この本が使い魔?と思うと、パラパラとページがめくりだし、本の隙間から人影が出てきた

「ひぃっ!」

自分でも驚いて、一歩下がるララ

本を右手に持ち、現れたのは何の変哲もない普通の青年だった

栗色の髪にやさしそうな雰囲気、でもどこか凛々しいような面立ちだった

『お久しぶりです』

青年は会釈しながら頭を下げた

「だ…誰…?」

恐る恐る青年の顔を見ると、当たり前だが、見たことのない顔だった

「…そいつは、ダンタリアンか。まぁ、当たり前といえば、当たり前だがな」
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