青の祓魔師

□彼らを嫌いな理由
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【正十字学園男子寮】

今日は塾のみんなが合宿としてココに来ることになっていた

「…はい、終了。プリントを裏にして、回してください」

雪男の指示でみんな一斉にプリントをめくった

「ちょ…ちょっとボク夜風にあたってくる」

「おう、冷やしてこい…」

燐はふらふらと部屋から出て行った

「あ、私も…」

そう言ってララはそそくさと燐の後を追った

「だー…意味わかんね…ララわかったか?」

「ううん、さっぱり」

ララは明るく笑いながら、首を横に振って答えた

燐は近くの自動販売機でジュースを買って窓の外を眺める

何を考えているのか、何も考えていないのか…どこか憂いを帯びた顔だった

「お前、アレどう思う?」

「アレ…って?」

「最近、しえみがまろまゆにパシられてるんだよ」

燐は半分イラついたように眉を顰めた

(パシリってなんだろう…?)

心の中でそう呟いた

「燐は優しいね」

「…はぁ?」

「しえみのこと心配してるんだ」

「そ、そ、そんなんじゃねぇし」

ララも自動販売機でジュースを買いながら燐に言った

「そうなんだよ。燐は優しい。だから…気をつけてね」

「え?」

「自分を犠牲にするのは愚か者ってこと」

にこりと笑いながらララは燐とは離れて廊下を歩き出した

「意味わかんねぇんだけど」

燐はララの後ろを歩きながらジュースを飲み始めた

しばらく歩いているとしえみが突っ立っている姿が見えた

「あ、しえみだ」

「しえみ、なにやってんだ」

ララと燐はしえみに声をかけた

燐はどこか遠くを見ている

「なんでもない…フルーツ牛乳買ってこなきゃ…

しえみはそう言うと踵を返し、走り出した

すれ違うしえみの左腕を燐は強く握った

おい

「な、なに…?」

お前…それやめろ

「それって?」

ララはただ二人の行く末を見守っていることしか出来ない

だからパ…使いっ走りみてーのだよ変だろ!!

燐は必死にしえみに気づかせようとしている

ここで邪魔するわけにはいかないのだ

「使い走りじゃない、友達を助けてるんだよ

助けてねーよ!!お前本気でそう思ってんのか?思ってねーだろ

ララは暢気にジュースを飲みながら、二人を遠目に見る

「…もともと、強くて友達のいる燐にはわかんないんだよ…

しえみが去り際に言った言葉がララにはとても皮肉に思えた

燐は燐で走り去ったしえみを追いかけて行ってしまった

「…ぁ、山田、お風呂どうするんだろう…」

暢気にそんなことを考えた

ララは飲み終わったジュースのパックと、さっき燐が落としていったパックを拾い

途中にあったゴミ箱まで足を進めた

ぽいっとゴミ箱に二つのパックを捨てると、しえみと燐のところへ戻ろうと踵を返し廊下を歩き出した

風呂場前まで差し掛かったとき、突然女子の甲高い悲鳴が聞こえた

「え、何?風呂場?」

驚きながらも、ララは女子風呂の扉を開けた

「どうしたの?」

入ると、出雲の後姿と朴のひきつった顔が目に入った

そして、その視線の先には屍系の悪魔の姿があった

「…さがってっ!!」

ララは出雲と朴に駆け寄った

出雲は朴を後ろに下がらせると魔法円が書かれた紙を取り出した

(…ダンを出すか?…いや)

ララは胸元のポケットにしまってある紙のことを思い浮かべたが彼を出すのはやめておいた

その代わりに右の手のひらに書いた魔法円を見せるように手を開いた

これは塾で習ったのではなく、独学だ

悪魔を召喚するのではなく、仕舞ってある物を取り出すときに使う

「"神の息、穢れたモノへの浄化の力"」

右手から出てきたのは愛刀、神息(シンソク)だった

黒い鞘に赤黒い色の柄をした、昔シュラに貰った刀だ

ララは刀を抜き、鞘を落とすと悪魔に向けた

「………あ」

『……汝め………なんだその心の有り様は』

突然、後ろから悪魔の声が聞こえてきた

出雲の使役している悪魔の白狐の声だった

「…な」

どうやら、彼女の心が揺らいでいるらしく白狐達は出雲に襲い掛かろうとしていた

(間に合わな…)

戻ろうとして踵を返したところで突然人影が入ってきた

「きゃ…」

ゴッといい音を立てて、白狐達をふっとばしたのは燐だった

燐が来たことにより、ララは屍系の悪魔に集中することにした

といっても、一発で仕留められるわけもなく、図体のわりにちょこまかちょこまかと刃をかわしていた
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