青の祓魔師

□廉造にしがみつく
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強い風が頬を通り過ぎ、髪をもてあそんでいた

「燐っ!!」

思わずララは燐のそばへと走り出していた

「おや、お久しぶりですね、エンジェル」

「グァア、グルグルグル…」

まるで獣のような声を上げながら燐は自我を失い暴走していた

「来てはいけませんよ。やめなさいララ」

メフィストにそう止められたがララは構わず、まだ暴走している燐に抱きついた

「グァアアアアア」

「燐っ!私だよっ!!…うっ」

燐は抱きついてきたララの右肩に噛みつくと、皮を剥いだ

大量の血が右肩から腹部まで流れていった

「やめなさいと言っておいたでしょう。聞き分けのない子ですね」

メフィストはやれやれという風に首を横に振った

そしてキンッと音を立てて鞘に刀を納めると燐の暴走していた本能が消えた

ガクッと力の抜けた燐を支えるようにしてララは痛みをぐっと堪えて立つ

メフィストはパチンと指を鳴らした

「起きなさい、魔剣同士の戦いなど、そう見られるものじゃない」

「は…?」

燐はまだララに抱きかかえられるようにして立っていた

「カリバーン…"我に力を"」

アーサーはそう言って、カリバーンという魔剣を構えた

フッと消えたアーサーに皆驚きの色を隠せない

途端ぐいっと引っ張られるようにして燐がララから体を離した

アーサーは燐の首を掴むと、剣を向けた

「正十字騎士団最高顧問三賢者の命において、サタンの落胤は誅滅する」

そう言ったアーサーの剣を遮るようにシュラが剣を振りかざした

「ま…また消えた」

燐は目を丸くしている、一方メフィストは感心するかのように消えた先を探している

ララは傷のことなど忘れて、ただアーサーの行方を目で追った

シュラは左の親指を少し齧り、血を出すとそれを生贄にあの技を繰り出した

……霧隠流魔剣技…蛇腹化…蛇牙

しかし、その見事な技をアーサーは一瞬にしてかわした

「………チッ」

「シュラ」

シュラの背後に風のように金髪の影が靡いた

「何故このサタンの仔を守る、メフィスト側に寝返ったのか?」

「なワケねーだろ」

シュラは剣を首元に突きつけられているのにも関わらず、落ち着いている

「死んだ師の遺志に添おうとでも思ったのか?…あんな歴代聖騎士の中で最も不適格だった男のために」

ちげーよクソバカ、ハゲ!!テメーには一生理解できねーからすっこんでろ

シュラはそう言って、アーサーを睨んだ

反対にアーサーは俺はハゲじゃないぞ、などと笑っている

ララは何もせず、ただ事の行く末を見守るだけだ

アーサーは連絡機のようなものと会話している

しばらくして剣をシュラから離し、燐とメフィスト、ララのほうへ向けた

「三賢者からの命だ。今より、日本支部長メフィスト・フェレスの懲戒尋問を行うと決まった」

その言葉を聞いた途端、ララの心には不安が過ぎった

「当然、そこのサタンの仔も証拠物件として連れていく」

…ほうそれは楽しみです☆

メフィストは本当に楽しそうな声で呟き、パチンと指を鳴らし、まるで魔法のように服を着替えた

一方、ララはメフィストのことよりもシュラや燐のことが心配になった

「わ…私も…」

「大丈夫ですよ。」

ララの言葉を遮るようにメフィストは耳元にて、小さな声で囁いた

「…ララは、奥村先生達と一緒にいてください。」

「で、でも…私も一応悪魔だし…」

「サタンの仔と、悪魔のハーフは関係ないですよ」

メフィストはそれだけ言うといつもの悪戯をする時の子供みたいな笑みを残した

「ブルギニョン候補生を連れて行け

「――――あの僕が引率します。一年生の薬学の担任です。」

雪男はそう名乗り出た

ララもメフィストに言われたからには従わなければならない

何も出来ない自分が悔しいのを必死に堪え、踵を返した

途端、後ろで燐が大声をあげる

みんな無事か!?

燐の気遣いに対し、勝呂の答えはとても酷いものだった

先ほどのアマイモンがつけた、喉の傷が痛むらしく、叫んだ後、すぐに咳き込んだ

「…………説明します、とにかく落ち着いてついてきて下さい」

雪男はそう言いながら、扉へ候補生達を誘導した

「…燐」

ララはしえみとすれ違う形で扉へと向かう

「し、しえみ……体…平気か?な、なんだよ、どっか痛いのか!?」

燐の気遣う慌てた声が後ろで響く

悲しくて聞いていられなくて早足で医務室へとかけていった
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