青の祓魔師

□物語の一日
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ララは仕方がないから適当に歩いてみることにした

すると、たすたすたす、と良い音を立てながら一定の歩幅で歩いてくる人影を見つけた

「あの」

「ん?」

人影がはっきり見えてきたぐらいにララは声をかけてみた

フードをかぶっていて、顔は見えないが、ズボンが男子生徒のものだったので、祓魔塾の人だと思った

「職員室…みたいなとこてどこですかね?」

「あっち」

そう言ってフードの人はララの来た道を指差した

「え、あっちなのっ?!通り過ぎたのか…ありがと…えと、名前は?」

「…山田」

フードの人はそれだけ言うと、ララの横を通り過ぎ歩いていった

しかし、行く方面が一緒なのでララは山田の後ろを歩くような形になった

「山田さん、ありがと」

声をかけながら、御礼を言った

「…。」

しかし、山田は無反応だった

「山田さん、下の名前は?」

「…。」

山田は無言のまま、歩いていく

「あ、私、私ねララ」

「…。」

「今日から祓魔塾に通うんだ!…ずっと夢だったの!山田さんはなんで祓魔塾に?」

「…。」

「…。あのね、さっきから一つ気になってることがあるんだけど…」

と言いかけて、山田の様子を伺ったが反応はなしだったので話を続けた

「…懐かしい匂いがする…獅郎みたいな…」

その途端、山田は勢いよくララを壁に押し付けた

突然のことに吃驚して動けなくなるララ

「あんな奴と一緒にするな…!」

小声でも顔が見えなくてもハッキリとわかった

彼女は悲しんでいるのだと

「…あれ、修羅場やないですかね?」

遠くから聞き覚えのある暢気な声が聞こえた

「…何やっとるんや!?」

廉造とは違う声が廊下に響いた

「…チッ」

山田は舌打ちをしてスタスタと廊下を歩いていった

「…何や…アイツ」

ララは足が震えてヘナヘナと座り込んでしまった

「…あれ!ララちゃんっ?」

廉造は驚いた顔をしてララのそばまで駆け寄った

「大丈夫?…山田君と知り合いなん?」

ララは首を激しく振って否定した

「知らない…!」

ララは震える足で踏ん張ってよろよろと歩き出した

「…大丈夫やろか?ララちゃん…てか、何で此処におるんやろか?」

「志摩さん…それを一番に考るはずやろに」

子猫丸は呆れた顔をしていた

ララは必死に壁づたいに歩きながら職員室を目指していた

(シュラの馬鹿…!)

何があってこちらに来ているのかわからない

どうして、理由を言ってくれないの…?

しかしそんなことより許せないのはあの言葉だ

ララは、獅郎を侮辱しないでほしかった

足の震えが止まらないのは、だから、なのだろうか…?

「…どうかしましたか?」

突然、後ろ上から声が降ってきた

「…?」

首を捻り左上後ろを振り向く

そこにはメガネの青年が心配そうにこちらを見ていた

「大丈夫ですか?」

「…しょ、職員室はどこですか…?」

どうして職員室にたどり着かないんだ、と半ば泣きそうな状態だった

「…すぐ、そこですが…?」

と言ってメガネの青年が指差したのは次に差し掛かる扉だった

「あ…もしかして転校生で…」

と、メガネの青年が言いかけたところでララは気を失った

やっと職員室に着いたにも関わらず、ララは気絶してしまった

目を覚ましたのは職員室の長椅子に寝かされた直後だった

「…はれ?私…?」

ぼんやりと見える視界の中で徐々に鮮明になっていく人の顔

さっきのメガネの青年だった

「…あ、あぁ!すみません…お見苦しいところを…!」

そう言いながらララは勢いよく起き上がろうとした

「まだ安静にしておいて下さい…!」

メガネの青年に押さえられ再び寝転がるララ

「すみません…あ、私…ララと申します。新しい訓練生です」

貴方が…とメガネの青年は納得したように頷いた

「僕は祓魔師で、対悪魔薬学の講師をしています…奥村雪男です」

雪男はそう言って温和そうな雰囲気をかもしつつ、にこりと笑った

「奥村…雪男」

ララは、呆然として雪男を見つめた

「はい、何か?」

噂は聞いていた、最年少で祓魔師になった奴がいると

獅朗からも、メフィストからも、シュラからも…

多くの人に期待されている人材

…それがとても哀れに思えた

こいつも、自分と同じなのだと、感じた
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