青の祓魔師

□物語の一日
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雪男の案内で、祓魔塾の教室まで歩いていく

「では、まず軽く挨拶してから、授業に集中して下さいね。あ、それと席は自由席です」

雪男の説明を受け、少しずつ塾というものを理解していくララ

塾の教室と思われる扉の前で立ち止まり、雪男はゆっくり扉を開けた

中には数名の生徒がバラバラに座っていた

「今日から、訓練生として塾に通うことになった加藤ララさんです」

雪男の説明のあと、ララはよろしくお願いします、と頭を下げ、改めて教室を見回した

生徒を見回すと、先ほど下で出会った出雲と朴さんの二人、後ろの席に山田

左後ろの席にはぬいぐるみをもっている不思議な少年

その少し前には見たことのある顔があった

桃色頭の少年、志摩廉造だ

あちらもララに気がついて、愛想よく手を振っている

廉造の前に小柄でメガネの坊主少年がいた

その横には、先ほど、ちらりと見かけた厳つい目付きの少年

ララは、廉造の席に行きたいけれど…あの人がどうしても怖かった

苦笑いを浮かべ、軽く会釈を返し、再び目を向けるのは前の席

ちょこんと座っているのは着物姿で日本人形みたいなのに髪が金色を帯びている不思議な少女だ

やはり知らない人と隣は嫌だな、と思いスタスタと後ろのほうまで歩いていく

一人で座るのもいいが、今は少し人と話してみたかった

すとん、と座ったのは山田の隣の隣

一人分ぐらいの間隔を空けて山田の横に座った

「えーと…奥村君が来てませんが、始めます…」

雪男はそう言いながら、持っていた銀色のケースを開いて中から何か取り出した

雪男はその説明をしながら、何か黒板に書いていく

それを書きとめながら横目でちらりと山田を見た

「…。」

すっぽりとフードをかぶっていて、まったく顔が見えない

けれど、匂いでわかった

懐かしい匂い…血の匂いと獅朗の匂いが入り混じる中に柚子とシトラスの混ざった香りもほのかに感じる

あぁ、やっぱり彼女だな、と思ったとき

山田がぺらりとノートを端をめくっているのに気がついた

ララは目線を少しだけずらしてその端を見る

[黙ってろ]

その一言は今の状況にふさわしい判断だと思う

自分の正体がバレただろう、けど確信も持てない

しかし、もしバレていたなら口止めしなければいけれないが

もしバレていなかったら自分で墓穴を掘ることになる

つまり、彼女は曖昧な言葉で口止めを促したわけだ

そこまで考えているのかどうかはわからないが…。

[わかったよ。赤獅子ちゃん]

ララも自分のノートにそう殴り書きしてみた

[それ、やめろ]

山田もノートにそう書くとすぐに消した

「…はいはい」

小さくそう頷くと授業へと戻った

始まってから10分というところで突然扉が開いた

「奥村君、遅刻ですよ」

雪男は視線は前を向いたまま、そう言った

「へぇーい…さーせん」

扉を開けて、入ってきた人をよく見ると見覚えのある少年だった

「奥村君っ!」

がたんっと音を立てて、ララは思わず席から立ち上がった

その声に驚いて、燐はしばらく驚いて固まった

しばらくして、あの塔で出会ったララだと認識するとますます驚いた顔になった

「ララ?!…な、なんでお前此処に?」

「今日から訓練生として塾に通うことになった加藤ララさんですよ」

それよりも奥村君、早く席についてください、と雪男に睨まれ、燐は大人しく着物の少女の隣に座った

やっと塾が終わった

いよいよ、初めての寮生活ということになるのだが…

ララは寮がどこなのか聞いていなかったし、鍵も貰っていなかった

メフィストを探さなくては、と意気込み席を立つと、燐と目が合った

隣にいた山田はいつの間にか、塾の教室から退散しようとしていた

これ以上関わっていても、迷惑をかけるだけなのでララは山田を追いかけるのはやめておいた

その代わりといってはなんだが、燐の近くまで歩いていった

「奥村君も此処の生徒だったんだね」

「あぁ、…にしても、すごい偶然だな」

「残念…偶然ではなかったりするかもしれない…」

ララはそうひとりごちた

小声で呟いたので燐にはハッキリと聞こえなかった

「そっちの子は?」

そう言って、金髪の着物の少女に顔を向けた

「も、杜山しえみでっすっ!」

着物の少女、しえみはあまりの勢いで頭を下げたので、髪がばさばさになっていた

「よろしくお願いしますね」

「こここ、こちらこそっ!!」

しえみは頬を真っ赤にして再び、頭を下げた

…変わった子だな
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