青の祓魔師

□バカと喧嘩は塾の花
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彼女の考えは、こうやって時間を稼いでいれば先生が戻ってきてくれるだろう

それか、女子は自分の肝試しに参加させたくないというならきっとあきらめるだろうと思ったのだ

蝦蟇の近くまで来たときにガシリッと肩を捕まれた

振り返るとそこには勝呂がいた

「やっぱ、俺は先や…こういうんは男が先やろが!」

「意味わかんない…男とか女とか…。あ、それにほら、よくレディファーストとか言うじゃない?」

そう提案をしているが心の中でレディという年でもないのだけれど、と呟いていた

それでも譲らない勝呂

ララの策に嵌ってはいるのだけれど

ララはだんだんと融通の利かない勝呂にイラつき始めた

「意味わかんない!!なんで、そんなに肝試ししたがるの?」

「お前こそ、なんでしようと思ったんや!!」

「なんでって…それは君を!」

そこまで言いかけて言葉を飲み込む

「あぁん?もしかして、俺を止める為とかか?」

「…き、君が…燐のこと腰抜けだって言ったのが許せなくて…!」

とっさの答えだったが、半分は本気だ

燐は腰抜けなんかじゃない、優しいだけだ、とララは信じている

「なんや…お前アイツのこと…好きなんか?」

「…?うん、そうだけど?」

当たり前でしょう、といわんばかりの顔をして答えた

燐を嫌いなわけがない

誰にでも優しくて

優しくあろうとすると空回りして

でも素直で、まっすぐで

…悪魔なのに

そうだ、彼は獅朗の最後を見たんだ

獅朗も良い奴だった

「彼は…最高の聖騎士だったよ」

「あ?」

勝呂は突然の言葉に首を傾げた

「ねぇ、勝呂、こんなところで過去と戦ってる場合じゃないでしょ?」

ララはまっすぐと勝呂の目を見た

曇りなき眼…燐と同じ目をした少年だった

「過去と戦う?何言ってるんや…お前の言うことは意味わからん」

そう言って勝呂は呆れたような顔をした

やっとあきらめるかと思いきや、その歩みは蝦蟇へと向かっていっていた

「ちょっと!」

追いかけようとすると大声で怒鳴られる

「来るなや!!これは俺の決意や!!俺は…」

彼の決意もわかる、それを証明したいってのわかる…だから、邪魔が出来ない

ララはただ、勝呂のすぐ後ろで見ていることしか出来なかった

「サタンを倒す!」

(…何、言って…?サタンを倒す?確かにそう言ったの?)

ララの瞼から人知れず、涙が零れた

「ブッ…プハハハハハハハ!ちょ…サタン倒すとかあはは!子供じゃあるまいし」

後ろから女の子の…出雲とかいう少女の笑い声が聞こえてきた

そうだ、普通は笑うところだ

(でも、私にとっては…それが)

突然に、蝦蟇が大口あけて襲い掛かってきた

あわてて、勝呂のそばに駆け寄るララ

しかし、とっさのことで気が動転し、自分を盾にすることしか思いつかなかった

勝呂を覆う形で蝦蟇に背を向ける

しかし、衝撃は背中に直撃することはなかった

不思議に思い、後ろを振り返るとそこには燐の背中が見えた

「きゃああ」

「燐!」

遠くで叫ぶような声が聞こえてきた

よく見れば、燐は蝦蟇に食われかけていた

ララも驚いて、勝呂を覆っていた体を離し、燐に駆け寄ろうとする

『放せ』

突然、燐の声が聞こえた

しかし、これは普通の声じゃない

燐の心の声だ

悪魔のテレパシー的な能力

彼も使えたのか、と驚きながら燐を見守る

考えてみれば、彼も悪魔のハーフだ

何も心配することはなかった

『放せっつってんだ!!!!

案の定、燐の心の声が蝦蟇に届き、大人しくなった

…なにやってんだ…バカかてめーは!!いいか?よーく聞け!!

燐は無傷だったのでララはほっと息をついた

蝦蟇から放してもらい自由になった燐は竜士を睨んだ

サタン倒すのはこの俺だ!!!!てめーはすっこんでろ

その言葉にまたしても驚くララ

…バ、バカはてめーやろ!!!死んだらどーするんや

(…このバカ達は…私の唯一の希望の光だ)

青春の終わりは自身の死かそれとも…

ララは微笑んだ
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