青の祓魔師

□時を録す者あり
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ネイガウス先生はそういいながら、次はいないか?と呼びかけた

「あ、当たり前って…何それ」

誰でも当たり前に召喚できるのか…と思い、肩をがっくりと下げた

「わ…私もおいでおいで〜〜なんちゃって……」

しえみの紙からは緑の妖精みたいなのがポンッと現れた

「それは緑男の幼生だな、素晴らしいぞ、杜山しえみ」

しえみのは素晴らしくて私のは当たり前

ララは、またしても肩を落とした

授業が終わり、ララは紙を破こうとした

『待ってください、何の仕事もなしですか?』

「だって、授業で呼び出しただけだもん」

『ガーディニアさん、変わりましたね…』

「ガーディ…なんとかって何?」

『あれ、自分の名前まで忘れたんですか?』

まさか、名前?と言いかけて、ララはハッとする

「貴方、誰かと人間違えしてるんじゃ…?」

いままで一度も召喚したことのないララに"久しぶり"といった時点でおかしかったのだ

『間違えてませんよ』

ダンタリアンはにっこりと笑いながらそう答えた

「ララちゃん、すごいなぁ〜使い魔出せたんやね〜」

「…。」

いつものへらへらした笑みを浮かべながら廉造が近づいてきた

ララはまたもや無視し、すたすたと教室から出て行った

「ありゃりゃ、もう照れんでもえぇのに〜」

「…いや、あれはどう見ても嫌われてるでしょ……」

出雲はそう言いながら廉造の横を通り過ぎ、廊下へと出て行った

「…嫌われてるんぐらいわかってますよ」

廉造は自嘲気味に笑って、出雲達の背中を見送った




ララは寮に帰って、使い魔に問いただしてみた

「私は以前、貴方に会ったことがあるの??」

『えぇ、あります。俺と貴方が出会ったのは今から8年前です』

ダンタリアンはララの部屋の床に正座すると話出した

『貴方が俺を忘れているのも無理はありません。"抑圧された記憶"というのを聞いたことがありますか?」

ダンタリアンの質問にララは首を軽く横に振って答えた

『辛い記憶、トラウマなんかを無意識のうちに忘れてしまうこと…いや、封印してしまうといったほうが的確ですね』

ララはダンタリアンの話を半分理解し、また半分理解できないでいた

ダンタリアンは右手に持っていた分厚い一冊の本をめくりだした

『ここに、貴方の過去、現在、未来に渡る思考が書かれています』

そう言って彼は本の中身をララに見せた。

しかし、そこに書かれている文字はおよそ人の文字とは見えなく、ましてや日本語ではないのはあきらかだった

「えっと…それが?」

『これは俺にしか読めません…お望みであれば読みましょうか?』

「…ううん、いい」

ララは首を横に振り、悲しそうな笑みを浮かべた

「悲しい記憶なら今はいらない。」

『…たしかに、悲しい記憶です。でも、大切でもあります』

彼もまた悲しそうな顔で本を眺めた

「貴方と会ったときの記憶はどんなだったか、わからないけど、今こうして会えてるんだからいいと思うの」

『…。俺も、そう思います』

そう頷くがダンタリアンの表情は暗い

「あ、ねぇ、ダンタリ…ダンでいい?」

『はい』

「おなかすいてない?…燐がご飯作る時間だから食べにいこう」

ララはそう言って立ち上がった

『いえ、俺はいいです。…貴方も必要ないのでは?』

「うん、でもおいしいよ」

ダンは動かず、じっと本を眺めて首を振っただけだった

「そっか、わかった」

ララはにこりと笑い、部屋を出て行った

『…。彼との記憶は大切なもので…あってほしいんですが…』

ダンはそう呟いて、本を閉じた
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