青の祓魔師

□守るって約束
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「二匹か…俺が外に出て囮になる」

燐はそう言いながら立ち上がった

口々に皆が止めるがそれでも燐は止まることはなかった

「俺のことは気にすんな、そこそこ強えーから」

バッ、おいッ!奥村!!

勝呂の声は届かず、燐は枝の間をすり抜けていった

「燐っ!!待って!!」

ララは大声で暗闇の向こうに叫んだ

「自分を犠牲にしないでって言ったでしょ!?」

「…大丈夫だって、俺が死ぬわけねーだろっ!」

燐の元気な声が余計にララの不安を掻き立てた

「燐…!」

ララの声も届かず、廊下へと走る足音だけが聞こえた

「…なんて奴や…」

「結局一匹残ってますけどね!!

燐の後についていったのは一体だけだった

残った一体は太い枝をへし折りながらこちらに近づいてきている

しえみは息が乱れてとても苦しそうにしている

「…クソ」

それを見て、勝呂は何かを決めたように呟く

詠唱で倒す!!

突然言い出した勝呂の言葉に皆、驚いた顔をみせた

「坊…でもアイツの"致死節"知らんでしょ!?」

「…知らんけど屍系の悪魔は"ヨハネ伝福音書"に致死節が集中しとる」

勝呂が言うにはそれを全部言っていけばどこかしら当たるだろうということだった

「全部?二十章以上ありますよ!?」

「…二十一章です…僕は一章から十章までは暗記してます…手伝わせてください」

子猫丸と勝呂は詠唱を始めたら集中的に狙われるというのだが

それでもやるしかないと決断したようだった

子猫丸は一章から十章、勝呂は十一章から二十一章を詠唱することになった

『"太初に言ありき"』

『"此に病める者あり…!!"』

子猫丸と勝呂は一斉に詠唱を始めた

廉造は錫杖を構えて、いざというの時に援護するらしい

出雲はこの間から使い魔が従わなくなったらしく、手は出さずに横で見ている

ララも、この前のように刀を右手から取り出し、廉造と同じく、万が一に備えることにした

後ろを振り返るとぬいぐるみの不思議少年とフードを被ったシュラが事の行く末を見守っているようだった

まるでメフィストみたい、と心の中でシュラに悪態をつきながら睨んだ

途端にバリバリという音が近くまでやってきたことに気がついて屍のほうを振り返った

『"汝、汝らを導きて真理をことごとく悟らしめん"』

勝呂のほうは十六章十三節の途中のようだった

ふと、横を見ると限界が近づいてきたのかしえみが目も開けらないほどつらそうだった

「…。」

ララは彼女を見て、覚悟を決めた

何を迷うことがある。自分は吸血鬼のハーフなのだ

大怪我をしてもすぐに回復する

けれど、しえみは生の人間だ…このまま続ければ、死んでしまってもおかしくない

「しえみ、使い魔の命令をといて」

「…え?何、言ってんのよっ!そんなことしたら、あたし達全員…っ!」

「大丈夫。私が戦うから…」

ララはそう言いながら微笑むと刀の柄を握り締めた

「む、無茶ですよっ!?加藤さんっ!」

子猫丸も止めるが、ララの覚悟は揺るがない

「…勝呂。目を閉じておいて。…私が良いていうまで開けちゃダメだよ?」

勝呂に背を向けて立ちふさがった

「…しえみ」

彼女の名前を呼ぶのと同時にしえみの使い魔は木の枝を一瞬にして消した

するといままで枝で邪魔されていた屍は猛スピードでこちらに向かってきた

ララは刀を構えた
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