青の祓魔師

□守るって約束
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ドッ

鈍い音が響いた

ララの目には白いシャツの後ろ姿

「…志摩さん!?」

「ははっ…ララちゃんのこと守るって決めたからなぁ…」

そう言って廉造は錫杖を振り回して屍の動きを鈍らしていた

「志摩さん、どいてっ!」

「嫌や…っ!」

廉造はムキになっているようにそれだけ言うと、屍を食い止めようと集中した

「私は…」

ララはそこまで言って口ごもった

(私は悪魔のハーフなんだよ?…守ってもらう理由なんてない…)

情けなくも自分が震えていたことに気づいた

それを止めようとするが、意識すればするほど震えが増した

震えて足が立たなくなり、床に膝をついてしまった

ララの意識が恐怖で朦朧としていく

『"…これ彼が如何なる死…"』

勝呂は最後の二十一章に入ったらしかった

途端、廉造は持っていたキリークが吹っ飛ばされてしまった

だが、屍の前から動こうとしなかった

「志摩さん、無茶ですっ!!下がってください!!」

子猫丸の忠告も聞かず、廉造は背中をララ達に向ける

「…安心しぃ、子猫さん。坊の言ってるんで最後やろ…?」

最後まで体を張る廉造に子猫丸は見ていられないというように目を塞いだ

ララはそんな廉造の背中に無茶だからあきらめて、と願ったが震えていて声にはならなかった

途端、廉造のその後ろ姿が誰かと被って見えたような気がした

「……造…?」

ララの赤い瞳から大粒の涙が流れた

頬から落ちると同時に出雲の声が闇を裂いた

『"靈の祓!!!!"』

その見事な二つの光に導かれるようにララの意識は戻り、震えは不思議と止まった

「神木さん!!

「やった…!?」

しかし屍にその術は効いていないらしくまだ動きを止めていなかった

ララはついていた膝を床から離すと、刀を再び握り締めて走り出した

勝呂と廉造の前に再び、立ちふさがると屍に向かって、にやりと微笑んで見せた

『"これらののち、イエスは…"』

うろ覚えだが二十一章の始めの言葉を口にした

それにより勝呂に向かっていた矛は一瞬だけララに向いた

ギヂャッという音がララの右の耳元で聞こえた

同時に激しい激痛が首から右肩にかけて走った

「きゃあああっ!!」

出雲の叫び声が聞こえた

激痛の中にいるララはぼんやりとした意識の中、必死に屍の懐に刀を突き差した

なるべく深く、抜け出せないように刀の切っ先を天井に向けた

その不快な感覚に顔を歪めながらも、痛みのことなど忘れてただ勝呂の詠唱が終わるのを願っていた

激痛を感じなくなっていき、肩に酷い重みを感じた時、救いの言葉がやっと耳に届いた

『"…その録すところの書を載するに耐えざらん!!!"』

パアンッと一瞬の音を立てながら屍は塵と化した

痛みと重みから解放されたララは力が抜け、膝を折ると、床にうつ伏せに倒れた

「あ…はは、やったぁ…」

痛みは感じつつも勝利の喜びと安心のほうが大きかった

「やった、や…ないやろっ!?」

勝呂は大声で叫びながら、ララの元へ駆け寄った

「お前、肩…大丈夫かっ…?」

「うん。大丈夫…あ、燐っ!」

突然、燐のことを思い出し、全身の力を使って起き上がった

「燐のこと迎えにいかなきゃ…あ、あれ…」

ふらふらと千鳥足のようになりながらも、数歩ぐらい歩いてから、再び床に顔をぶつけた

「ちょっと、無茶やめなさいよっ!そんな体で…」

出雲も心配そうにララを止めた

「でも…燐のこと、心配だから…なぁ」

うつ伏せのまま、起き上がる気力のないままララはにっこりと笑う

すると、突然、電気がついた

「…きっと、燐がつけたんだ…」

ララは電気がついたことにより燐は無事に屍を倒せたということを知り、安心した。

「…。」

「し…志摩さん?どないしはったんですか?」

突然、廉造は立ち上がるとララが倒れている横まで歩いていき、座った

「ララちゃん…ごめんなぁ…」

廉造はそう言いながらララの右手に軽く触れた

「俺…ララちゃんのこと守れへんかったわ…」

「志摩さんは…頑張ったよ。ありがと」

ララは泣きそうな廉造の顔を見上げながら力の入らない右手の指を動かして廉造の手を握った

(こんなこと…前にもあった…)

途端にデジャヴを感じたが、ただの錯覚だろうと気にしなかった

「なぁ、さっき…俺の名前呼んでくれたやろ…?」

「…え、そうだった?」

「俺の聞き間違えじゃなきゃ多分…なぁ、もう一回…俺の名前…」

「おい!ぶ…無事か…?…っ!ララ!?」

燐は不安そうな顔をしながらララに駆け寄った

「お前…どうしたんだよっ!こ…れ…」

「…これは」

突然、部屋に雪男が入ってきた

やっと帰ってきた雪男に皆は安心したような顔を見せた

雪男の後に続くようにネイガウス先生も現れた

ネイガウス先生」

!!

だが、燐だけはネイガウスの登場により表情を歪めた

ゆ、雪男…そいつてき…
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