青の祓魔師

□守れなかった大切なもの
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高い天井、長い廊下、薄暗い雰囲気の中、存在する二つの人影

「塔の上に閉じ込められてる少女、やて…?」

志摩は、眉を顰めて聞き返した

「あぁ、聞いた話だけどな、学校の七不思議みたいな感じなんだってさ…」

志摩と一緒にいるのは祓魔塾で知り合った友達だ

男子生徒は、志摩に今日クラスで聞いた噂を話していた

「なんや、ラプンツェルかいな?」

「ラプンツェル…!たしかに!!でも、俺的には、何か危ない悪魔が封印されてるんだと思うんだよなぁー」

男子生徒の思わせぶりな話し方を志摩は考えすぎや、と突き放し、一人、祓魔塾教室への扉を開けた






それから二日後、志摩は日曜日で学校が休みということもあって気晴らしに学校探検という目的で散歩に出掛けた

ある程度の時間も過ぎ、そろそろ帰ろうかと思っていた時

どこからか歌が聞こえた

とても綺麗な、透き通るような歌声

志摩は吸い寄せられるように歩き出していた


『愛されないのは生き続けるから、愛されないのは枯れないから』

この歌は前に一度だけ、誰かが歌っているのを聞いたことがある

部屋を通り過ぎた時に、鼻歌まじりに聞こえてきた歌だ

志摩は、地元を懐かしくなりながら耳をすませた

段々と近づく音に楽しくなる志摩

途端、空から歌が降ってくるのに気がついた

見れば、すぐ前には高い高い塔の上に続く階段が伸びていた

好奇心が勝った、この綺麗な歌声の人物はどんな人なのか確かめたかったのだ

『戦場に咲いてしまった』

志摩は可憐な声に自分のうろ覚えの歌詞を重ねる

『『銃声を聞いてしまった』』

階段は結構長かった、体力のある志摩でも参ったぐらいだ

息も切れ切れ、やっとたどり着いた塔の上に綺麗な人影が映っていた

金色の髪が光を弾くように、揺れている

少女は軽くステップを踏みながら、踊るように歌を歌っている

さっきの歌っていた歌が終わるとまた違う歌を口ずさみ始めた

『Sometimes we play, crispy christian tea time, with barbies tea and toast.』

今度は英語の歌で、志摩には何の歌かわからない

しかし楽しそうに笑い、歌う彼女が昔、絵本で見た絵本のお姫様のように見えた

確か、その絵本の題名は…

「…ラプンツェル」

思わず、志摩は口から声を落とした


しまった、と思った時には遅かった

金髪の少女が不思議な顔をしながら振り返った

「あ…」

志摩は何かを話さなければならないという気持ちになった

「いい天気やね」

我ながら、不自然な挨拶だと思った

はじめて会ったのだから、はじめましてのほうがまだ自然だ

「…。」

少女は、悲しそうに笑うと、志摩と距離
をとるように、後ろへと下がった

「ま、待てや、別に怖くないで?俺は怪しい者じゃ…」

志摩は必死に少女を引きとめようとした

此処に来た説明をしようと口を開いたと同時に、少女のあの綺麗な声を聞いた

「怖くないの?」

どこか嬉しそうな、驚いたような声だった

「私、悪魔のハーフだよ」

その言葉に、志摩は友達に聞いた噂話を思い出した

"学園のどこかの塔に閉じ込められている綺麗な少女がいるんだってさ"

"なんや、ラプンツェルかいな?"

"ラプンツェル…!たしかに!!でも、俺的には、何か危ない悪魔が封印されてるんだと思うんだよなぁー"

「…ほんまに、ラプンツェルみたいやな」

少女は志摩の言った言葉の意味がわからず、首を傾げている


「悪魔のハーフなんて、どこにでもいるやろ?」

「本当?」

少女は悪魔のハーフのことを知らないらしく、とても驚いた顔をした

それから少し嬉しそうな顔でもう一度訊ねてくる

「私のこと、怖くないの?」

「別に、お前のこと怖いわけないやろ?」

志摩は、にっこりと笑った

「むしろ、俺には綺麗に見えるで」

「綺麗?」

少女は、まるで初めて聞いた言葉を繰り返すような口調で呟いた

「綺麗やで、歌も、お前も」

志摩がそう言うと少女は笑みを浮かべた

まるで花が咲いたような笑み、先ほどの悲しげな笑みとは違った

心から楽しそうに笑う笑顔だった

「私…ララ」

ララは明るい笑みを浮かべて、志摩を見上げた

「俺は志摩…」

「志摩くんね、覚えた!」

無邪気にララは微笑んだ

志摩もつられて、笑みを浮かべる

それからララの塔の上の家に招かれて、一緒に他愛ない話をして

暗くなると再会の約束をし、別れを告げた



それから、志摩は足繁くララの家に通った

学校のこと、剣術や魔法円、世間のニュースなどを志摩は話し

ララからは、花の世話の仕方、対悪魔の薬草はコレよりアレがいいとか、星占いやルーン文字なんかも教えてくれた

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