青の祓魔師

□意地張り少女
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「え、出雲ちゃん?!大丈夫??」

ララは作業を中断して、出雲に近寄った

「へ…平気よ。ちょっと余所見してただけだから…」

「いや…でも…血、出てる」

その言葉に驚くように出雲は自分の手を見る

くっきりはっきり傷ができて、血が溢れ出ている

しえみも驚いて、慌てて救急箱を取りに言った

「べ、べつにこれくらい…舐めとけば」

「でも絆創膏貼らないと食中毒になっちゃうからね」

そう言いながらララは出雲の手を取り、心臓より上に上げる

途端に本能がざわめくような感覚がした

「わかってるわよっ!…て、何して…」

じっと出雲の指から落ちる赤い血を見ながらララは本能と理性の間を揺れていた

(少しくらい…)

べつにいいだろう、と思いパクリと出雲の指を銜えた

「なっ!!」

出雲は照れているのか怒ってるのか顔を真っ赤にして、固まった

「ん。」

ララはしばらくして何事もなかったかのように口から指を離した

そこにタイミングよく、しえみが戻ってきた

「はい!救急箱!!」

「しえみナイス」

ララは出雲の手当てはしえみに任せて、また包丁を握って作業に戻った

ちらりと後ろを見るとまだ出雲は固まっていた

(…あちゃー)

後悔が胸を過ぎったが、今は仕事をするのみだ

べつにハーフだという正体を知られても、対してかまわないだろう

「なぁ、ララ」

燐の声がすぐ左から聞こえてドキリとした

驚きを悟られないように普通の顔で振り向くと燐が何かを言いたそうな顔で立っていた

「あ…あのさぁ…」

そう言いながら燐の目線はララの手元に向かっている

それを見てピンときた、燐は料理を手伝いたいのだと

ララはくるりと持っていた包丁を回し、持ち手を燐に向けた

「はい」

「…え?」

燐は面食らったような顔をして包丁を見る

「燐の出番だよ」

ララがにっこりと微笑むと燐も笑い、包丁をとった

そして近くのじゃがいもをとり、ララよりも手際よく皮を剥き始めた

「ララはサラダつくれよ」

「了解」

手当ても終わり、しえみと出雲も戻ってきたので作業を再開した



燐の作ったカレーは大好評

嬉しそうな燐を見ていたら、ララも嬉しくなっていた

「ララはいるか?」

「え?」

「飲みモンや、飲みモン」

勝呂はそう言って、クーラーボックスを指した

「んー…燐は?」

「俺、ビッケル」

そう言いながら燐はペットボトルを掲げる

「じゃあ、私も」

「あ、あかん…奥村くんのでしまいや」

廉造がそういうので、じゃあ緑茶でいいと返事しようとしたら燐がララに向かって何かを投げた

「ほい、俺の飲みかけだけど」

「ありがと。燐はもういいの?」

ララはそう言いながら燐の持っていた飲み物を眺める

「おう!」

そう燐は笑ってクーラーボックスから緑茶を取り出した

ララは立ち上がると燐に近づいて、持っていた緑茶を取り上げた

「うそつき」

ララはそう笑いながらビッケルを返す

呆れ半分、怒り半分な気分だった

どうして自分が損をしてまで、誰かを気遣うのか、燐の行動が少しイラついたのだ

彼はいつもそうだ

自分よりも友達が優先。それとは反対に廉造は自分が大事だろう

勝呂や子猫丸は何か大切なものをもっているそんな気がする

燐と廉造は特定して大切な人がいないのだろう

(じゃあ、私は…?)

そう思いながら緑茶片手に空を見上げる

その答えはすぐに出た

(私、燐が大切なんだ。)

だから燐に損や危害があることは嫌だ

自分でそれを招く燐も嫌だ

だから、ララは燐を守りたいのだろう

やっと燐に対する気持ちがわかった気がした




「…では夕食が済んだところで、今から始める訓練内容を説明します」

「つまり肝試し肝試し〜〜♪」

雪男の横で騒いでいるのは飲酒済みのシュラだった

いつの間に、飲んだのだろうか

「つかその女18歳や言うてなかったか!?」

勝呂は叫びながらヘロヘロに酔ったシュラを指差した

「何をバカなことをこの人は今年でにじゅうろ…」

雪男の言葉はカンっと鈍いとも鋭いとも言える音で遮られた

「んにゃー手ェすべった〜」

シュラのカンが投げたのが当たったのだった

「おい……仕事をしろよ…!!」

雪男は鬼の形相でシュラを睨んだ

しばらくしてから、ハッとしたように顔を変え、説明を続けた
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