青の祓魔師

□嘘はつきたくない
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「…志摩さん、自分がビビッてるのに私のこと気遣わなくていいから」

「え、何言うてんはんの?俺は別にぃ〜」

怖くないとでも言おうとしたのだろう、その言葉を塞ぐように持っていた刀を廉造の顔に向けた

ビッと空気を切る音と共に、廉造の声は消え、顔が強張った

「お…おい…」

勝呂が微妙な表情で両者を見る

「Son of a bitch」

低い声でそう呟くと、ララは刀を静かに降ろした

そのまま二人に背を向けて、燐とシュラのほうへ歩いていった

「お前、相当嫌われてるなぁ…」

「サノバビッチで、どういう意味でしたっけ?」

「…。」

勝呂は口を結んだ

「あれ…杜山さん!?」

廉造の声が響き、思わずララも振り返った

「ちょ…あれ…!?」

「えっ」

しえみはスタスタと牆壁の外へ歩いていっている

シュラは目玉飛び出すぐらい驚いた顔をした

おいおいおいおい!!止めろ!!!

急いでシュラは立ち上がり、しえみの後を追いかけようとする

しえみが牆壁の外に出た途端、前上から先程の青年、アマイモンが落ちてきた

「その娘に何をした!?」

シュラが大声でそう訊くと、アマイモンは余裕の表情で答えた

「虫豸の雌蛾に卵を産み付けてもらいました孵化から神経に寄生するまでずい分時間がかかりましたが」

アマイモンはストンと牆壁の外へと足を踏み出したしえみの前に落ちた

「これで晴れてこの女はボクの言いなりだ」

しえみを寄せて、アマイモンは無表情でそう言った

しえみは意識がないらしく、人形のように虚ろな目をしている

「しえみ…!!

「さぁおいで」

しえみは確実に操られている

「ビヨーン」

アマイモンはそう言ったかと思うと、しえみを抱え、何処かへ高く跳んでいった

ま…まてこのトンガリ!!

コラ!!お前が待て

燐はアマイモンを追って牆壁の外へと走り出してしまった

それをシュラが止めようと追いかける

燐の行く手を遮るように、先程、アマイモンと一緒に出てきたベヒモスという悪魔が木陰から襲い掛かってきた

燐を後ろから追っていたシュラがベヒモスを弾き返す

行け!!アタシも後を追う

シュラはそう言って持っていた燐の剣、降魔剣を燐に投げた

燐は見事、受け取り、アマイモンとしえみを追った

奥村!!

お前らは死んでもその牆壁から出るなよ!!

シュラはそう言い残しベヒモスを避けて、闇の中へと消えた

「そんな……」

勝呂が何か言いたそうにシュラを見たが、その次の言葉はやりきれない思いと共に消えた

「…大丈夫だよ。勝呂、安心して」

ララはポンッと軽く勝呂の背中を叩いた

「燐が死ぬわけないよ」

「俺は心配なんぞしてへん。あいつに腹立ててんのや…」

「なんで?」

まさかの答えにララは、きょとんとした顔で首を傾げた

「なんで…あいつはいつもいつも…一人で突っ走るんやぁ…俺やお前や…仲間がおることをなんとも思ってへんのか…じゃあ何のために俺達がおるんや」

勝呂の説明に、今まで以上にララは目を丸くきょとんとした顔をした

少し間を置いてから、ララは優しく微笑んだ

「…帰ってきたら、燐を叱らないとね」

「お前…なんでこないな時に笑えるんや…そりゃぁ、あいつは強いみたいやけど…心配なん…」

勝呂の次の言葉はララの人差し指にて、塞がれた

「勝呂のおかげだよ。ありがとう」

勝呂は驚いた顔でその笑みを浮かべるララを見ることしか出来なかった

ララが勝呂の唇に当てていた人差し指を離すと共に、ドンという轟音が空の高い場所で破裂した

そのまま空の空気を切るように、何かが頭上を流れていき、すさまじい音と共に木々を倒した

地割れのようなダム工事のような音が森に響き渡る

音の正体は燐がアマイモンによって吹っ飛ばされ、叩きつけられた音だった

普通の人間なら死んでいるだろう

「…あ…の…」

勝呂が震える声で燐の姿を確認している

「勝呂」

そのララの声にハッとした表情で勝呂はララを見つめ返す

ララはにっこりと微笑むと刀を握り締めた

「私も叱ってくれるかな、後で、帰ってきたら」

勝呂の前に出て行き、背中越しに勝呂にそう言った

「帰ってくるから」

ニッと誰にも見られないように口元を吊り上げるとララは走り出した

「加藤さん!?絶対外に出るなって…」

「ララちゃん!?戻ってきてや!」

「やめなさいよ!馬鹿じゃないのっ!!」

(馬鹿でも阿呆でもなんでもいいよ。私は燐が大切なんだもん)

落石で出来た場所に上がっていく

その大きな石の上に燐とアマイモン、しえみがいる

後ろを振り返れば、牆壁の皆が見える

(良かった。皆、出てないね)

安心させるため、ララは皆に向かって手を振った

「はて…貴方は…?」

「貴方の敵」

その言葉をきいてアマイモンはにやりと笑った 
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