短編小説
□理解不能
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気づけば、アンタのその青い瞳を追いかけていたんだ。
「ルーク!後ろ!」
ティアの声ではっとする。
チラと背後を見れば、俺に向かって飛んでくるポルターガイスト。
正面のバットを仕留めて、半回転しながら剣を横に薙ぐ。
それを、近くに居たアニスが攻撃している。
(やっぱ、でけぇ……)
ブンブンと腕を振り回すトクナガを見ながら、俺もトドメとばかりに技をぶっぱなした。
戦闘が終われば、ティアの小言が始まった。
まぁ、しゃーないかな、とは思う。完全に俺の不注意だし。
けど、こうもぐだぐだ言われるとさすがにウゼェ。
「あーもう、わーったって!ちょっと考え事してたんだよ!」
「だからそれが…!」
「ティア…」
落ち着きのある低い声が凛と通る。
俺はそいつの目を見て、ああ、やっぱ綺麗だ、と思う。
青くて、深くて、吸い込まれそうな…。
ティアの目も青いけど、それとはまた違うんだよな。
見入っている間にヴェイグによるティアへの説得が終わったらしく、青い目はしっかりと俺を見ていた。
「……からルーク、気をつけろ」
「え、あ……おう」
話しをろくに聞いてなくて返事が怪しいものになってしまったが、許してくれ。
悪気は無いんだ。
そんなこんなで、コーラル城に入ってから一時間は経っただろうか。
あー!とアニスの声。
ようやく探し物が見つかったようだ。
「結局、何探してたんだ?アニス」
どうしてもって言うから仕方なく来たのだ。
尋ねても「乙女の秘密ですぅ☆」って言うばっかでサッパリ。
これでそれ相応の物じゃなかったらマジ許さねぇ!…つっても、相手は女の子だし……はあ。
そんな事を考えながらアニスの手元を覗き込む。
するとそこにはただのピンクのリボン。
(マジありえねー……)
確かに質は良さそうだ。
だがリボンはリボン。とんだ徒労だ。
けど、アニスを見れば凄く嬉しそうにそれを握りしめている。
怒るに怒れない俺は、何となくヴェイグを見る。
するとそいつはアニスを微笑ましげに見ていて……。
(何だよ、そんな顔もすんのかよ…)
俺に向けられた訳でもないのに、まあいいか、なんて思う俺は現金なヤツかもしれない。
「よほど大切な物なんだろう。見つかって良かったな」
そう言って、今度は俺に優しい笑顔を見せてきた。
まさか俺に向けて笑ってくれるとは思って無くて、頬が一気に熱くなる。
「あ、お、そうだな!」
うんうん、と頷く俺を少し訝しげに見ていたヴェイグだが、またアニスを見て笑ってた。
ほっとしたような、寂しいような……。
(あーあ、ホント、どうしちまったんだろ…)
向かいにはまたもや魔物。
モヤモヤとした気持ちのまま、俺は再び剣を抜いたのだった。
end.