短編小説

□お風呂の時間!其の一
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「風呂に行ってくる」

ヴェイグがそう言ってから二時間が経つ。
いつもなら一時間程度なのに。
ティトレイは先に入ったから急かす気は無いのだが、流石にこうも長いと何かあったのではないかと心配になってくる。
だが、裸の、しかも風呂に入って濡れたヴェイグを見るだなんて理性が保つだろうか?

(いや、ムリだ…!)

ティトレイは即座に否定する。
悶々と考えていると、風呂場からヴェイグが出てきた。
どうやら何事もなく風呂を済ませた様だ。
ホッとしたのもつかの間、ティトレイは水を飲むヴェイグに尋ねた。

「なあ、ヴェイグ。風呂で何してたんだ?」

「風呂?…別に、いつも通りだが……」

いつも通りで一時間も延びるものか。
ティトレイは更に尋ねる。

「けどよ、今日は二時間近く入ってたぜ?何かやってたんじゃねぇのかよ?…も、もしかして玩具で遊んで…ぶふっ!」

「そんなわけ無いだろう!…どんな目で俺を見ているんだ、全く」

バスタオルをティトレイに投げつけたヴェイグは眉間に皺を寄せながらもう一杯水を飲み、一息吐く。

「まあ、多少いつもと違うことはしたが……」

「そ、それだ!で、何してたんだよ」

被ったついでに、クンクンとヴェイグの使ったバスタオルの匂いを嗅いでいたティトレイは、ハッとして身を乗り出した。

「……処理を、ちょっとな…」

「処理…って……」

ティトレイは少し考える。
男、風呂、処理。
この三つから導き出される答えは……アレか。
それなら俺に言ってくれたら良いのに。ああ、でもこいつの事だから恥ずかしくて言えなかったんだな。気付いてやれなくてすまなかった!でも恥ずかしそうに言ってくるのも有りだなあ…と、頬を緩ませるティトレイ。
かと思えば、次には妖しい眼差しをヴェイグに向け、彼をベッドの上に押し倒した。

「うわっ、ティトレイ…!?」

これまでの経験からこの後の展開が容易に想像出来たヴェイグは、せめてもの抵抗として、上に跨がる人物を押し返す。

「悪ぃ、気付いてやれなくて…。風呂場で処理したくなるほど、だったんだろ…?」

「は?何言って……」

「ヴェイグ!」

「や、ちょ……あぁっ!」




暗転。




「へ?毛?」

何とも間の抜けた声は、先程までの低く色めいたそれとは正反対だ。

「ああ。勝手に勘違いするな馬鹿」

ぶつぶつと文句を言ってくるヴェイグの顔はほんのり赤くて、怒られているにも関わらずドキドキとしてしまうティトレイ。
だが、それがいけなかったのか、まだまだ若いな、何て思っていたら話を聞いているのかと頬をつねられた。

「いててっ!き、聞いてるって!(それにしても…)」

ティトレイは頬を擦りながら思う。
男から『処理』と聞いて、一体誰が『毛の処理』だと連想するだろうか。
女性ならまだしも、男の処理と言えばあっちの事だろう。
そんなことを考えて、まあ何でもいいかとこぼした。

「何がだ?」

「んー?こっちのこと。それより、さ……」

この後、余計な一言を言って殴られるティトレイであった。




end.
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