ハンプティ・ダンプティの囁き
□制裁
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低く覆う茶色い雲の下を切り裂いて
雨を告げる黒い鳥が飛ぶ
吹きつける強風
木の葉がはためいて
突如叩きつけた
雨
銀の糸は風に流されてレースの様に
染み着いた都会を洗ってゆく
全て流してしまえ
何も残らないように
前も見えぬぐらい
人が滝壺に吸い込まれるほどに
ビルは崩れて
車は潰れて
まるでノアの洪水のように
でも
私たちを救う箱舟は
もう跡形もない
濡れて重くなった孤独を引きずって
廃墟となった街をさまよい歩く
投げ捨ててしまいたいのに手から離れなくて
どんどんと重さを増してゆく
重くて 重くて
もう ササエキレナイ
雲の間から日が射しても這い出す者は いなかった。