ハンプティ・ダンプティの囁き
□午後3時40分
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あなたが行ってしまってから、手紙は何通も届きました。
手紙の一番最後に必ず書いてある、あなたの力強くて堂々としたたった四文字の言葉が、私の生きがいでした。
───…「待っとれ」
あの別れの日から夏は何度もやって来て、そして去ってゆきました。
私が小学校の真ん中へんまで上がった頃だったでしょうか。
届いた手紙の大半は、あなたのお母さんの字で埋められていました。
そして一番下には小さくあなたの字で、
「お元気ですか。」と。
私が待ち望んだあの四文字は、手紙をひっくり返しても、何度読み返しても、どこにも書いてありませんでした。
泣きました。ご飯も食べず、父親に怒鳴られても駄々をこねて。
まだ幼かった私に、三つも年上のあなたの気持ちなど、分かるはずも無かったのです。