□我儘
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お前だけを愛している。
だから俺だけを見ていてくれ。
「そんなこと言ったら…独占欲の強い奴だって嫌われるんだろうな」
ふぅ、と疲れたような溜め息をついてユダは考える。
彼は今ルカの家に招かれて来ていた。出された飲み物を飲み干すと、手にもった空のグラスを強く握る。
指先にこめられているのと同じくらいの強い力でシンに触れたい。
でもそんなことをすれば
あの華奢なシンのことだ
一瞬で壊れてしまうに違いない。
たまにわからなくなる。
自分が本当はどうしたいのか。
もてる全ての力でシンを守りたいと思う反面、壊してしまいたい。いっそのこと嫌いになって欲しいと破壊衝動に駆られることもある。
どっちが本当の気持なのか。
「どっちも…だろ?」
はっと我に返ったユダはいつの間にか部屋に入ってきていたルカを振り返る。
「ル…カ」
面白そうに笑いながらルカはユダの隣に腰をおろした。
「めずらしいこともあるものだな、お前がこんなに悩むなんて」
「そうか?」
「あぁ…少なくともいつものお前なら俺が入ってきたのに気付かないなんてあり得ないな」
親友に指摘されユダは苦笑を隠せない。
「それより…」
ルカがしばらくしてから言う。
「その傷の手当はいつする気なんだ?」
再び親友に指摘を受けてユダは自分がグラスを握りつぶしていたことに初めて気がついた。
「!!すまない、ルカ!」
「いいや、グラスのことなら気にするな」
「だが…」
「気にするなら自分の手を気にしろ、シンに俺が怒られる。」
ルカはユダを追い払うような手つきで立たせる。
「あぁ、もう来てるみたいだな。シンに言っておけよ、お前が勝手にコップを握りつぶしたんだってな。」
シンの気配をドア越しに感じてユダを追いたてる。
「すまない」
「いいから、行けよ」