コードギアス

□a phobia about losing you
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俺は今、困っている。
 
 
愛しい君が、あまりにも…
 
 
…あまりにも、「さよなら」を怖がるから。
 
 
 
 
 
 
≪a phobia about losing you≫
 
 
 
 
 
 
ルルーシュの腕の中で、カレンは眠ろうとしていた。
ベッドの上で、やることもやったし、二人でシャワーも浴びた。
後は、朝までつかの間の休息を思う存分味わうだけだ。
いつもは、そういう決まりだった。
それがなぜか、今日はうまく出来なかった。
 
特にさしたる理由もあがらない。
 
ただ、ひとつ思い当たるのは、……あなたの存在が、………?
 
………? 
 
…綺麗なかたちの言葉にできない、その感覚は、一種の恐怖のようだった。
 
 
「…ねぇ、ルルーシュ」
 
かなり長い時間声を出していなかったから、少し掠れた声が出た。
ルルーシュは彼女が起きていることに少し驚いたようで、背中の筋肉がピクリと動いたのが、カレンの指先に伝わってきた。
 
「起きていたのか…どうした?」
 
ルルーシュは少しカレンと距離をとって、互いの顔が良く見えるようにした。
 
 
 
 
「ルルーシュは、死んじゃうの…?」
 
 
 
 
ルルーシュは、少しだけ息を止めた。
…目の前の少女が、見知らぬ者に感じられた。
 
「、人は皆、いつかは死ぬんだよ…」
 
ルルーシュは微笑みながら、カレンの額髪を掻きあげた。
指先から、動揺が漏れないように気をつけながら。
 
「ルルーシュは死なないんだよ…私がずっと守るから。絶対に」
 
カレンは一瞬睫毛を伏せたあと、ルルーシュを真っ直ぐに見つめた。 
 
「私が死んでも」
 
「…それは、…心強いな」
 
彼女はどこまでも無表情で、彼女らしくなくて、ルルーシュの動揺は深まるばかりだった。
 
長い長い沈黙が、重く漂う。
もう、永遠にこのままなのかと思う。
それでも、いい。
それのほうが、いい。
 
―…永遠を破ったのは、ルルーシュだった。
 
「なぁ、カレン。俺は守りたいんだ。守られるよりも、大切なものを守りたい…」
 
ルルーシュはそっと掌を握った。
中には繊細なガラス細工が入っていて、それを優しく、壊れないように包むかのようだった。
カレンはじっと、その拳を見つめた。
 
「ここには、君も入ってる。だから―…」
 
カレンはルルーシュが言い終わらないうちに、見つめていた拳を自分の掌で潰すように握った。 
細い指先が、震える。
 
「やめて」 

「…っ痛い、カレン…」
 
…カレンは、ますます力を込めた。 

「私は…私は、貴方がなんと言おうと、貴方の傍から離れない。ずっと隣にいるわ。……さよならなんて、しない」
 
彼女の澄んだ瞳に、じわじわと恐怖が浮かんで、少し経って目頭からベッドへ飛び降りていった。
ぽつん、という音が、二人の鼓膜に響いた。
 
…わかってしまうのだ。
今目の前にいる、この愛しい少年が、消えてしまうと。 
もう二度と、会えなくなってしまうのだと。
しかも、彼自身がそれを望んでいるのだ。
…そしてそれは、遠い未来の話では、ない。
 
ねぇ、一緒に生きてよ。
私と一緒に、『生きて』…。
 
 
ルルーシュはしばらくの間、雫のダイビングを眺めていた。
ベッドに近い方の目からは、飛び降りるのではなく、流れ落ちるように雫が旅立つ。
綺麗だが、卑怯な感じがした。
無機物にこんな感情を抱いたのは初めてで、それはやはり、カレンの涙だからそう感じるらしかった。
 
ルルーシュは、そっとカレンの手を、自分の拳から外した。
そして、ゆっくりと語りだす。 
 
「カレンは、さよならの意味、知ってるか?」
 
「さよならの、意味…?」
 
…意味なんてない、そんなの。 
 
カレンの睨むような目に、ルルーシュは少し困ったように微笑んだ。 

「…"また会うときまで、お元気で"…次にまた会うための、口約束だよ」
 
カレンは目を見開く。

 
 
この嘘は、信じるべき…?
 
 
 
「さよならを言ったら、また会える…?」
 
 
 
 
……ルルーシュは、ただ微笑むだけだった。
 
 
 
「…愛してるよ…」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
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