コードギアス

□lovesick
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「なぁ、カレン」
 
黒の騎士団のアジトにあるキッチンで、なにやらいそいそと作っている少女がひとり、そしてそれを寝転んで眺める少女がもうひとり。
 
「なによ。忙しいんだから話し掛けないで」
 
「…そういえば明日はそういうイベントの日だったな」

「別にそれは関係ないけどね」 

「…それ、アイツにあげるつもりか?」
 
「………………」
 
「その、なんだ、…爆弾みたいなの」
 
「うるさいわねっチョコよチョコ!爆弾ってなによ!ラクシャータさんじゃないんだから、そんな物騒なものあげるわけないでしょ!」
 
「…お前今自分で認めたぞ。バレンタインにあげるチョコだと」
 
「ぅぐっ」
 
C.C.のニヤリ顔に、カレンは顔を引きつらせた。
…そう、明日は世に言う『バレンタインデー』。日本では女性から男性に、ブリタニアでは男性から女性に、意中の相手にチョコレートと共に想いを届ける。
カレンはそういうイベントには頓着しないタイプだが、少し前、恋人…ルルーシュ・ランペルージが、欲しいようなことを仄めかしていたので、まぁ作ってやってもいいか…という気持ちではじめた。
が、どうしてか上手くいかない。
さっきから料理本の通りにやっているはずなのに、ブラウニーではなく、爆弾…いや、異物が出来上がってしまう。
それに加えてC.C.のちゃかし。
…イヤにならないほうがおかしい。
 
「あーもう!止めようかしら!なんかくだらなくなってきた…っ」
 
爆弾…ブラウニーの変異種のカタマリをゴミ箱にぶち込みながら言うカレン。
そもそも、ご飯を作るのとお菓子を作るのでは、いろいろ勝手が違う。
リゾットとかは作れても、スイーツなんて食べないから(スナック菓子の方がカレンは好きだ)、まるでわからない。
…むしろ、ルルーシュのほうが上手ではないか。
 
「ふむ…お得意の『三日間カレー』でも作ったらどうだ?」
 
「そんなのバレンタイン関係ないし!ロマンチックの欠片もないじゃない!」
 
カレンの口から『ロマンチック』…ルルーシュめ、大分調教したらしいな…とか思うC.C.。
 
「…爆弾よりはロマンチックじゃないか?まぁ、多少性行為中に匂うが」
 
「うるさい黙れ馬鹿女!」
 
「…はぁ…随分口の悪いロマンチストだな…」
 
「……っ」
 
カレンは握りこぶしに力を込めた。
 
…なによ…!
私だって、たまには女の子らしいことのひとつやふたつ、やりたくなるわよ。
ましてや、ルルーシュの期待が混じっていれば尚。
久しぶりに予定が入ってないんだもの、明日は。
…甘い時間を、過ごしたいと思ったって、ばちは当たらないはずじゃない…?
 
 
でも、と。じっとゴミ箱の中の失敗作達を見つめながら、カレンは思った。
…こんなの、ルルーシュがもらっても、嬉しくないんじゃない?
 
見た目だけじゃない。味見してもおいしいとは言えなかった。
 
好きな気持ちは、普段から伝えている…つもりだ。
だから、別にこの期に及んでわざわざチョコをあげる必要もない気がする。
でも、きっと、ルルーシュはすごく喜ぶ。
…その顔が見たい。
 
 
「…どうしたらいいのよ…」
 
思わず口から零れ出た弱音に、C.C.は珍しく、真剣な顔でカレンを呼んだ。
 
「…カレン」
 
「…なによ」
 
「こういうのはどうだ?」
 
 
 
 
わざわざ歩み寄って、耳打ちしてきたC.C.の言葉に、カレンは目を点にした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
≪lovesick≫
 
 
 
 
 
  
 
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