コードギアス

□Blue rainy days
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騒がしい街角からの避難場所のような喫茶店。
少し暗めの照明と、ゆったりとしたジャズがバックに流れる空間。
あの子を初めて連れてきたときは、「全然あなたっぽくない所ね」と散々笑われたものだ。
時刻は夕暮れ。本当はまっすぐ家に帰ろうとしていた所だったが、急な集中豪雨にやられ飛び込んだ。
(ちょうど通りかかってよかった…ひぃ〜背中が冷たい…)
頼んだブラックコーヒーで暖をとりつつ、ジノ・ヴァインベルグは知らず震えた。
季節は夏といえども、あんな雨に打たれたら下手をすれば風邪を引く。
クーラーの効きすぎていない店内はまさに天の助けであった。
さて、どうしたものか。
一気に退屈になってしまった彼は、ふと、ひとりの少女の顔を頭に浮かべた。
この雨の中呼び出すのは気が引ける。が、一度想ってしまうと無性に会いたくなった。
(呼んだら…きっと憤怒の形相で、それでもやってくるだろうな)
思い浮かべて、くすくすと広い肩を揺らした。
そういう子だ、あの子は。
素直になれなくても、行動が好意を伝えてくれる。
 
「…だろ?カレン」
 
…ああ、失敗した。口に出さなきゃ良かった。
口に出したら、そこから、ぽろぽろと「すき」がこぼれだしたように。
不思議な熱が唇に纏わりつく。
そして自覚する。あの子が好きなんだ、と。
ゆるゆると口元を綻ばせ、そこに一気にコーヒーを流し込む。
向かいの座席に置いてあったショルダーバッグを少々乱暴に肩にさげ、中から財布を取り出す。
会計を済ませ、店主に勧められたビニール傘を丁重に断り、そのまま少し走るような勢いで店を出た。
 
 
愛しい恋人に、会うために。
 
 
 
 
 
≪Blue rainy days≫
 
 
 
 
 
 
 
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