彩雲国物語
□堕ちゆく雫と傷と想い
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ある日、藍 楸瑛と李 絳攸は、王のいない執務室でなにやらこそこそと話していた。
《堕ちゆく雫と傷と想い》
「あと・・・四日だ」
そう言ったのは絳攸である。
「四日かぁ・・・うーん、どうしようか、絳攸」
楸瑛は顎に手を当て、考えた。
―状況の説明をする。
楸瑛と絳攸は日頃頑張ってる王、劉輝のために、誕生日の贈り物をしたい、と考案していた。
だが、いい贈り物が一向に浮かばず、思いついたときから既に半月も経っていた。
「女性への贈り物ならすぐに浮かぶんだけどな」
「それはお前だけだこの万年常春頭!主上への贈り物を考えろ!」
「じゃあ君はいい案があるのかい?」
「うっ・・・かっ考え中だ!考え中!」
「もう半月経っちゃったよ?」
「ま、まだ四日ある!」
毎日毎日、王のいないときを見計らい、二人で相談するのだが、全然いい案が浮かばない。
「私だったら・・・想い人が贈り物なら嬉しいけど」
「秀麗を、主上に贈る・・・?」
しばし沈黙が落ちた。
「・・・一番嬉しいかもしれんが、どうやって贈るんだ。どうやって!」
「そうなんだよねぇ」
一番喜ばれるのはソレだろうが、贈るに贈れない。
「そういえば、麓璃(ろくり)山に、一日だけ食べさせた人の心を自分に向けさせることができる薬草があるって聞いたことがある・・・」
「それがどうした?」
「だから、主上に上手いこと言って、秀麗殿に飲ませさせるんだよ。そしたら秀麗殿は一日だけだけど、主上を愛する」
「なるほど・・・いいかもな。よし・・・それでいくか」
二人は頷き、宮城のすぐ裏にある麓璃山へと向かったのだった。