彩雲国物語
□確かな絆
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これは秀麗が解任され冗官になり、貴陽へ戻って行った後の話・・・
《確かな絆》
なんか、このごろ変だ。
香鈴はふと思う。自分はこのごろ変だ・・・
今まで感じたことのない、もやもやした感じにとり憑かれていた。
影月様が、好き。ちゃんと本人に言えた。影月もそれに応えてくれた。
これ以上何も望むものはない―筈なのに、何かが香鈴を傷めていた。
―なんだろう?
そう思っていると―
「香鈴さーん!」
愛しい人の、自分を呼ぶ声がした。
「影月様!」
香鈴はパァっと明るい顔になる。
影月はこのところ忙しく、ろくに顔も合わせられていなかった。
久方ぶりに見る慕い人の、少しやつれた印象に顔を暗くする。
「影月様・・・ちょっとやつれましたわ・・・きちんと休めていらっしゃるの?」
「あー・・・いいえ、ですねー。ちょっとさすがに疲れてますー」
独特の柔らかな口調で続ける。
「でも、大分無茶やっちゃったし、後処理はきちんとやらないと・・・」
「でも体を壊されてはなりませんわ!お休みをもらったら・・・」
影月は嬉しそうに微笑み、頭を横に振る。
「心配してくださってありがとうございますー。でも、大丈夫です。体には気をつけますからー」
「そう・・・ですか。あ・・・今日は一緒に帰れますの?」
「・・・いいえ。今日はちょっと用事があるんですー。だから先に休んでてください。それを言おうと思って会いに来たんです」
「そ・・・そうです、の。で・・・っではお仕事頑張ってくださいませ!失礼しますわっ」
そう言うとピューっと去って行ってしまった。
影月はちょっと顔を暗くして、仕事に戻った。