彩雲国物語

□君のキライと僕のスキ
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ある日の午後、タンタンこと榛蘇芳は秀麗と一緒に昼食をとっていた。
 
 
 
 
 
 
 
《君のキライと僕のスキ》 
 
 
 
 
 
 
 
蘇芳が持つ粗末な包みの中に、不恰好なおにぎりが二つ入っている。

蘇芳はそれを少し目尻を緩ませて見つめたあと、口に運んだ。

秀麗は蘇芳の横顔をみて、少し微笑む。そして話しかけた。


「タンタン、私のおかずも食べていいわよ。一人じゃ食べきれないし、タンタンも一応男なんだから他の栄養も補わなきゃ」

そう言って、重箱を差し出す。

中にはおなじみの練って叩くものばかりが陳列していた。

それもかなりの量である。


「・・・一応、ってなんだよ。あのさぁ、これ絶対一人で食べきれないじゃん。こんなに作ってどーすんの。セーガのせいで家計も苦しくなったらどーすんだよ。つかどんだけムカついてんの」


今朝もたくましい雄叫びを発しながら、バシバシと麺棒を叩きつけていた秀麗は少し反省した。・・・そういえばこのごろ小麦粉を使いすぎている。


「・・・そうよね。今度からは包丁でぶった切る料理にするわ」


問題はそこではないのだが、蘇芳はあえて口をださず、代わりに秀麗の手作り弁当に箸をのばした。


「焼売に水煎包に寿桃(桃饅頭)に小龍包、大根餅・・・寿桃から食うか」

「あっそれは食後に甘味として食べるもんでしょ!?」

「いーのいーの。ハラん中入れば同じだし」

蘇芳はそういってまぐまぐと食べる。

「まったく・・・ほかのお野菜のおかずもちゃんと食べなさいよ?」

「ふぁーい(はーい)」


おいしそうに食べる蘇芳を見るのは、秀麗は嫌いではなかった。

だからついつい食べて欲しくて、余計に作ってしまう。

でもそう言うと絶対にヤメロと言うので、言わないでいる。

劉輝が見たら、嫉妬しそうだ。

そして二人は緩やかに流れる時を過ごし、昼食を食べ終えた。

あれほどたくさん入っていた秀麗の重箱には、何一つ残っていない。


「ごちそーさんでした。今日もウマかったぜー」

「ふふ、ありがとう」


にっこりと笑って、秀麗は礼を述べた。

重箱を包み、片付ける。


「よし。腹ごしらえも済んだし、仕事を再開しましょうか!」


年下のしっかりした少女は元気よく言う。


「へーい」


そして蘇芳はだらしなく返事を返すのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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