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□甘い君―甘くない接吻を・・・【彩雲国物語】
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「タンターン!・・・あれ・・・タンターン?・・・いないのかしら?」

秀麗はその日、仕事が早めに終わったので、タンタン(蘇芳)を連れて城下で買い物をしようとしていた。

たくさん買う予定だったので、荷物持ちをしてもらおうと思っていたのだが―

蘇芳がどこにも見当たらない。



「しょうがないわね。ったくどーこほっつき歩いてんだか・・・」

どっちが年上かわからないような口調で秀麗は言った。

「仕方ないから一人で行こうかしら。はぁ・・・」


そこに、秀麗が毛嫌いする一人の男がやってきた。









《甘い君―甘くない接吻を・・・》



「俺がついて行ってやってもいいぜ?」


「清雅・・・!何馬鹿なこと言ってんのよ。あんたと行くくらいなら、毛虫と行った方がまだマシってもんだわ。蛾男なんかと行くなんてまっぴら御免よ」


「毛虫も蛾も大して違わないがな。痛い目見ても知らねーぞ?」


「はんっ!望むところだわっ」


「―じゃ、お言葉に甘えて」



そう言うなり、清雅は秀麗を壁際に追い詰めた。

秀麗の手首を掴んで壁に押し付け、足の間に膝を割り込ませ、自由を奪う。


「おやおや、毛虫さんは蛾より弱いのかなぁ?」

「だっ誰が毛虫よっ」

「お前に決まってんだろ。ほんと性格甘いよな、ツメも甘いし・・・おっと、本物の爪も甘いのか、確かめないとな」

「なっ何くだらないシャレ言ってんのよ!あんた馬鹿!?」

「そうかもな」


そう言うと、清雅はにやっと口の端を吊り上げ、言葉通り秀麗の爪を舐め始めた。


「ひぁっ!!ちょっ・・・と何すんのよ!」


突然爪を舐められて、秀麗は不覚にも驚いてしまった。


「・・・結構可愛い声だせんじゃねぇか・・・もっと聞かせろ」










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