彩雲国物語
□君のキライと僕のスキ
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「うーん・・・この牢屋の幽霊の件・・・なーんか引っかかるのよね・・・」
首をかしげ、顎に手をやりながら秀麗は眉をひそめる。
蘇芳が読んでいた書物から顔をあげ、上目で秀麗を見た。
「あー・・・前から気にしてたヤツ?その報告異様に多いんだよな。なんかありそう?」
「んー・・・まぁ、調べてみる価値アリね」
蘇芳はまた書物に視線を戻した。
秀麗に読めと言われたものである。
「タンタン、それ読んじゃったら書庫に行って、貴陽の監獄と獄吏についての資料とってきてくれる?」
「りょーかい」
書物から視線をはずさず、蘇芳は告げた。
そしてまた室のなかに穏やかな沈黙が流れる。
しばらくして・・・
「よし。読んだ」
「ご苦労様。じゃ行ってきて」
蘇芳は椅子から立ち上がり、室を出た。
書庫へ行く道程は、遠くもなく近くもなく、気分転換にちょうどよい距離だった。
ふと立ち止まり、右側に生い茂る草木に目を留める。
宮城の中は管理が行き届いているため、一流の庭院と言っても過言ではないほど見事な風景だった。
さほど芸術に興味のない蘇芳でも、眺めるのが好きなほどだった。
少し眺めた後、蘇芳は空に目をやった。
「曇ってきたな・・・」
どんよりとした雲が、空を覆っている。
一雨降りそうだ。
「さっさと行って、さっさと戻ろ」
そして足早に、また歩き始めたのだった。