★小説〜伯妖現代版〜★

□7〜想いを伝えたくて……(前編)〜
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エドガーは先程からリディアに携帯を掛け続けているが、全然つながらない。

「やっぱり、駄目……か」

このまま雨の中ずっと捜しまわっていてもらちがあかないので、一旦家に戻ろうと思った時、携帯に着信音が鳴る。
ロタからだ。
携帯に出るなり耳元から早口の声が聞こえてきた。

「エドガー、森の大木の所まですぐ来て!」

プツンと、すぐ切れた。
おそらくロタがリディアを見つけたのだろう。
どうやらリディアは、別荘とは反対の方向に向かっていたみたいだ。
彼女が見つかってよかった。
エドガーは、ほっとした。
とりあえずロタが言ってた場所に行こうと、エドガーは急ぐ。
今いる場所からそんなに遠く離れていなかったため、目的地にはすぐに着いた。
その頃になると雨の方はすっかり止み、再び空には太陽の光りが戻ってきた。
ロタは木にもたれかかって立っていたがリディアは、座り込んでいた。
彼女はエドガーの姿を見るなり、手を地面につき、慌てて立ち上がろうとするが。

「リディア、無理するなって」

ロタに支えられてまた、座り込んでしまう。
リディアの苦しそうな表情にエドガーは素早く、リディアのそばに行く。

「リディア、僕の背中に乗って」
「え……?で、でも」

どうやらエドガーの背中に乗るのを、ためらっているみたいだ。

「足、痛むんだろ?」
「大丈夫よ。これくらい」
「リディア、その足じゃ、歩くの無理だよ。ここはエドガーの言う通りにした方がいいよ。じゃあ、あたしはひと足先に帰るよ」

頑張れよリディアと、言う声が聞こえきたが、何のことだろう。
彼女の顔は赤くなっているし。
リディアの今の、自分に対する気持ちなど知らないエドガーは、ロタのその言葉に少し気にはなったが、今はとにかく彼女を背中に乗せるのを優先した。

「ねえリディア。意地張ってないで、ほら」

それでも彼女はエドガーには触れてはくれない。
このままでは、いつまでたっても帰れないなと、思ったエドガーはリディアの両膝下に手を入れそのまま立ち上がった。
彼女は小さな悲鳴をあげ、とっさに両腕をエドガーの首にまわした。

「な、何するのよ。危ないじゃない!」
「きみが早く、僕の背中に乗ってくれないからだよ」

エドガーはリディアをおんぶして歩きだした。
彼女からはもう、それ以上の抗議の言葉は聞こえなかった。






                                    
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