★小説〜伯妖連載〜★

□このままずっと……
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結局、公爵夫人のお喋りに2時間以上付きあわされ、リディアは夕食を食べ終えてからずっと仕事部屋に閉じこもる羽目になった。

「奥様、少し休憩をなさって下さい」

ケリーが紅茶と一緒にチョコレートを持って来てくれた。

「先に寝ていいって言ったのに」

今夜は徹夜になりそうだから、彼女には先に寝るようにと伝えたのだが。
そうは言ってもケリーはいつも、起きていてくれる。

「冷めないうちにどうぞ」

淹れたての紅茶の香りと、チョコレートを口に含めば、体の中の疲れがすっと飛んでいく。

「ごちそうさま。おかげで、頭の中がすっきりとしたわ」
「それはよかったです。それよりも早くおやすみになって下さいね。明日はお茶会に出席もすることですし、それにあの公爵夫人から何をされるか分かりせんから。こんな時、旦那様がいらしたらよかったのに……」

ケリーはよほど明日のことが心配なのか。
グレルリン公爵夫人が帰ってからというものの、ドレスやネックレス、髪飾りをいつもより慎重に選び、入念にチェックをしていたのをリディアは知っている。
いつだってケリーはリディアのために最善を尽くしてくれている。
そんな彼女の努力を無駄にはしたくない。
だから明日は絶対に失敗はできない。

「大丈夫よ。それにいつまでもエドガーに頼ってばかりもいられないわ。お茶会は今まで色々と経験してきているから自信はあるのよ」

にっこりと、彼女の前で笑顔をみせた。

「わかりました。マナーについては奥様は完璧ですから恥じることはありませんわ。」
「ありがとう、ケリー」

明日は不安でいっぱいだったリディアだが、今のケリーの言葉で少し気分的にも楽になった感じだ。
一方ケリーは何か急いでいるらしく、慌てて片付けをはじめた。

「このあと何か用事でもあるの?」
「あっ……申し訳ございません。じつはレイヴンさんからニコさんが夜おやすみになる前には必ず、お酒を持って行くようにと頼まれていますので。それではこれであたしは失礼致します。あっ、それと早くおやすみになって下さいね」

最後の言葉に思わず笑みがこぼれる。
どんな状況でもリディアを気遣うケリーに、いつも感謝をしている。
それにしても毎晩レイヴンにお酒を届けさせていたなんて。
レイヴンもニコに頼まれたら断ることが出来なかったのだろう。
しかし、わざわざそれをケリーに頼まなくてもいいのに。
とりあえずは、仕事の目処はだいたいついたので今日はこれで、リディアは寝ることにした。




                      




                     
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