★小説〜伯妖現代版〜★

□6〜好きなの?〜
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あの海の出来事から1週間後、リディアは学校の寮には戻らずそのまま、自宅に帰って来た。
学校の方は夏期休暇に入ったため、学校が始まるまではお店の方の手伝いでもしようと、思っていたのだが。

“別荘、いつ来る?”

1週間たった今でも、あの言葉が頭に蘇ってくる。
別に、いつ行くのかも決まっていないし、それに、向こうからも連絡もしてこない。
このままほっとけば、行かなくていいかもと、思っていたのが甘かった。

「こんにちは、フレデリックさん。お言葉に甘えさせてもらって、ご自宅に伺いました」
「いやいや、こちらこそ忙しいのに時間をつくってもらって、ありがとう」

父がにこやかな笑顔で、あの金髪男を招き入れていた。
リディアはエドガーが家に来た時、今から無理やり別荘に連れて行くのかと思ったが、どうやらそれはリディアの被害妄想に過ぎなかったみたいだ。
どうやら今日はリディアにではなく、父に用事があるみたいだ。

「やあリディア、こんにちは」

相変わらず爽やかな笑顔で、挨拶をしてくる。

「……こんにちは」

リディアは、ブスッとした顔で挨拶をした。
多分誰がみても、可愛げがない女の子だと思うだろう。
そんなリディアの表情をみて彼は、にっこりとする。

「リディアさんは本当に可愛いお嬢さんですね。フレデリックさんが、羨ましい。この前の新作発表会の時に、リディアさんのエスコートができて僕は、幸せ者ですよ」

それにしても、こいつの目はおかしいのだろうか?
いや、これはお世辞かもしれない。

「エドガー、それは褒め過ぎだよ」

父の顔が少し緩んだ気がした。
2人はリディアの目の前で、和やかな雰囲気で喋っていた。
父はリディアと違って、エドガーに随分と打ち解けている。
それから父はエドガーを、リビングへと案内をする。
リビングに行く彼をちらっと横目で見ると、リディアに、ウインクをしてきた。
その時リディアはなぜか、自分でも分からないが、目をそらしてしまった。
あ……あれっ?
どうしたんだろう、あたし……?
いつもなら怒りながら顔を横に、向けるのに、今日は違った。
自分でも気がつかなかったが、リディアの頬は赤く染まっていた。




                 
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