★小説〜伯妖現代版〜★

□10〜彼女達の苦悩な日々(後編)〜
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先生の声が耳の中に入ってこない。
駄目だ!
エドガーのことが頭から離れない。
これじゃあいけない。
授業に集中集中!
リディアは顔を引き締めて、先生の話に耳を傾けた。
そして、さっきぼーとしていたぶん、ノートに急いで字を書き始めた。
そうこうしているうちにチャイムが鳴ったが、なんとか、まにあった。
よかった……。
次の外国語の授業のため、教室を移動しようと席を立ったところ。

「ねえ。あれから昨日教室に戻って来なかったけど、気分でも悪かったの」

キャスリーンがリディアに近付いてきた。

 「えっ?あ……そ、そうなのよ。昨日あれから寮に帰って、夕食までずっと、寝てたのよ」

と、言うのは嘘だ。
夕食のギリギリの時間までずっと、エドガーと一緒にいたのだ。
彼はリディアがどうして授業に出ないのか。
そんなことは一切聞かなかった。
だから一緒にいて楽しかったのかもしれない。
時間がたつのも忘れるぐらいとは、こういうことを言うのかもと、思った。
あの時は、このままずっと一緒にいたいと、思った。
そう思うのはあたしのわがまま?
たが、エドガーの方はそんなことは、望んではいないはず。
彼にしてみれば、ただの暇潰しぐらいにしか思っていないだろう。
でもリディアはそれでもいいと思った。
本気で好きになってくれなくてもいい。
片想いでもかまわない。
彼が自分のことを好きになってくれたらあたしは、毎日こう考えるだろう。
あたしだけを見て。
あたし以外の女の子を好きにならないで。
優しくするのはあたしだけにして。
あたし……、あたし!
その先を考えるだけでも、リディアはぞっとした。
自分はこんなに独占欲が強かったのかと。



                     
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