★小説〜伯妖現代版〜★

□15〜知りたかったこと(後編)〜
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昔母さんと2人でこの近くの公園に来て、お弁当を食べたな。
ここへ来るたびにエドガーは楽しかった、幼い頃の記憶を思い出していた。
綺麗で、いつも笑顔を絶やさなかった人だった。
それは母が、病気で寝込みがちになっても笑顔だけはいつも、エドガーに向けてくれていた。
花を片手で持ち、やって来たエドガーは母の墓石の前で立ち止まる。
また、花が添えられている。
エドガーは時間があればお墓に来て、枯れた花を取りかえたりしているが。
エドガー以外にもここへ来ているみたいだ。
誰だろう。
母の知人だろうか。
だが、母が亡くなったことを知っている人はそうはいない。
葬儀は、父とエドガーと牧師の3人で母を天国に見送った。
父は無理矢理人を集めようとしたが、そんなので参列してもらったって母が喜ぶとはとても思えなかった。
親子で葬儀をするのが母の遺言だと言ったら、遺言だったら仕方がないと、父は納得はしてくれた。
嘘でもつかないと人数集めで人を呼びそうだったから。
どうせこの葬儀のあと、母のこと思い出しもしていないことだろう。
ここへだって、来ている様子が全然ない。
父が今でも愛しているのはアウローラだけなのだから。
今日は母の命日なのに。
持ってきた花を供えると静かに目を閉じ、指を組み合わせた。
短時間だが、少しは心の中の痛みが取れた気がする。
また来るから。
そう別れを告げ少し歩きかけた時、向こうから見慣れた姿が視界にはいる。

「エドガー、今から一緒に来てほしいところがあるの」

昨日自分が泣かせた人だった。




                  
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