★小説〜伯妖現代版〜★

□1〜最低なあいつ!〜
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心臓がドキドキ。
どうしよう……。
あたし、うまくやっていけるかな?
スコットランドから出たことがない、この少女にとって、大都会のロンドンでの学校が不安でたまらなかった。
本当は自宅から通いたかったが、学校生活に慣れさせるために寮にはいるように父に言われたのだ。
転校初日なのに父は仕事が忙しいため今日1人でこの学校にやって来た。
しかも、この学校の敷地は広いので、学校の入り口が分からない。
体育館らしき物が見えてきて話し声が聞こえてきたので、学校の入り口を教えてもらおうと近くまで行きかけた時、

「そんなの、ひどいわ!」

女の方は顔を両手で塞いで、声をあげて泣いている。
男の方は後ろ姿しか見えないが、背はすらりと高く、髪の色は少女にとって、羨ましい金髪だ。
後ろ姿だけでも思わず見とれてしまう。
でも、次の男の言葉に彼女は、後ろ姿に見とれた自分に腹が立った。

「きみとした時は、中に出したことないんだけどな」

なっ……何、この人!

「今から産婦人科に一緒に行ってもいいけど、恥かくのはきみだよ」

開き直っているの?

「妊娠って言ったら、僕がきみと結婚すると思ったわけ?」

女の方はこれ以上聞きたくないと思ったのだろうか……。
走るように行ってしまった。
すると、男の方は急に少女の方を振り向き、ゆっくりとこちらに向かって、歩いてくる。
男が近づくにつれて少女の方は後ろへ、後ずさる。
とうとう壁際まで追い込まれて逃げ場がなくなり、男の手が壁につく。
するとゆっくりと顔が近づいてきて、このまま、唇が触れるかもしれないぎりぎりで、止まる。
自分が彼に吸い込まれていく感覚に陥るが、次の彼の言葉に、現実に戻される。

「きみも、僕としたいの?」
「はあっ?」
「今、5人待ちだから3日後ならOKだよ。場所、どこがいい?」

彼女の平手が、男の頬に当たる。

「あたし、そんな軽い女じゃないわ!」

彼女はそのまま怒って、走って行く。ほんのりとカモミールの香りが漂い、しばらくその香りに酔いしれる。
厚みのある封筒が下に落ちていた。

「リディア•カールトン」

封筒の表に書かれていた名前をみて、男は少し楽しそうだ。

「エドガー様、こちらにいらっしゃいましたか。そろそろ授業が始まりますが、今日はどうなさいますか?」
「ああ、レイヴンか。今日は久し振りに授業に出るとするか」
「めずらしいですね。何かあったのですか?それに頬が少し、赤いですが……」
「この頬の赤みは、僕に刺激を与えてくれたお礼かな……」
「……よく分かりませんが、それはよかったですね」

褐色肌の少年は首を、傾げる。

「まあそのうち、お前にも分かるよ。授業の前に先に校長室行った方が、いいかな」

エドガーはさっき、リディアが落とした封筒を片手に持ち、レイヴンと一緒に体育館から離れて、学校の入り口に向かって歩く。
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