★小説〜伯妖現代版〜★

□4〜彼女の忘れたい過去の一部〜
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ルシンダとはロンドンに来てから初めてできた友達。
ロタとはあのパーティー会場でただ、知り合っただけ。
でもリディアの頭の中には、彼女の笑顔が印象に残っていた。

“色々と優しくしてくれたかもしれないけど、それが彼女の手なんだよ”

あの言葉が彼女の口から聞くことがなければ、そのままずっと喋っていただろう。
できれば、あのまま彼女と友達にもなりたかった。
でも、今となってはそれも無理だ。

「お客さん着いたよ」
「ありがとう」

タクシーから降りて助手席側からお金を払い、あとチップも忘れずに払う。
タクシーが去ってからあらためて、目の前の超高層マンションを見上げる。
高い……。
まるでバビルの塔みたいだ。
初めて入るマンションにドキドキしながらも、エレベーターで最上階まで行く。
このエレベーターに乗るまでかなりのセキュリティーの難関を突破してきた。
さすが社長ともなれば、一般人と同じレベルの家に住むというわけにはいかないだろう。
そうこうしているうちに、エレベーターは最上階に着きチャイムを鳴らすと、社長が笑顔でリディアを迎えてくれた。

「やあ、よく来てくれたね。さあ入って」

会社から近く便利だからこのマンションを買ったと聞いていたが、1人暮らしにしては広すぎる。

「パーティーの時にはゆっくりと話しができなかったから、連絡をしてきてくれた時は、嬉しかったよ」

リディアの頬に手が、触れる。

「最近ますますアウローラに似てきている……」

アウローラと呟く声が聞こえる。
最近リディアが社長と会わなくなってきたのは、亡くなった母親の存在を彼女と重ね合わせるようになってきたからだ。
父からは、3人とも同じ大学の出身で親友同士と聞いているが、どうもそれだけではなさそうだ。
昔この3人の間に何があったか知らないが、リディアはそれ以上のことを聞かないようにしている。

「おじ様、あたしはママには似ていないわ」
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