★小説〜伯妖連載〜★
□このままずっと……
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苦しい……。
息はちゃんとしているはずなのに、どうしてだろう。
息苦しさのため目を覚ますと、目の前には見たくもない人物が現れた。
“殿下。ご気分は”いかがですか?お気に召されるかどうか存じませんが、女を連れて参りました。あなたのお好きなようになさって下さい”
彼は意味ありげな笑みを浮かべながらそっと、部屋から出て行く。
まだ夜明けにはほど遠い時間にやって来た少年に、エドガーの気分は余計に下降気味になった。
プリンスに忠誠を誓った少年。
今のエドガーの存在は彼にとって、好ましくないはずだ。
エドガーの中のプリンスが目覚めるのを今か今かと、待ち望んでいることだろう。
ふっと、エドガーの気づかないうちに女がそばまでやって来ていた。
あろうことに、いきなりキスをせがまれる。
リディアと同じカモミールの匂いを漂わしてはいるが。
そうだ!
リディアは、どこにいるのか?
リディアとは似ても似つかないその女をエドガーは突き飛ばし、部屋中を捜し回る。
“リディア……リディア!”
どんなに叫び声で呼んでも返事がない。
そのかわりに先程の女がまた、エドガーのそばまでやって来て、今度は抱きつきにくる。
“お前には用はない。離せ”
腕を振りほどこうとしても女はエドガーが思っているよりも力が強く、なかなか離してはくれない。
そして女はエドガーにこう言った。
“リディアがあなたを見捨てたわ”
彼女が……まさか?
ーあなたがあなたでなくなってもずっと、あなたのそばにいたいの……。もう離れるのは嫌なのー
確かにリディアは、エドガーにそう言ってくれた。
“お前の言うことなど信じない”
“でも彼女、怖がっていたわよね”
エドガーの胸に顔を埋めて唇から、息
が漏れる。
それがまた妙に、恐怖を感じさせる。
久し振りにリディアを抱いたエドガーは、いつもの自分ではなかったような気がする。
その間の記憶がほとんどないのだ。
気がつけば、リディアが着ていたナイトウェアは引き裂かれ、彼女の金緑色の瞳は怯えていた。
そんなエドガーが怖くなってリディアは逃げたのだろうか。
また、息苦しくなってきた。
これは夢だ。
目覚めないと……。
エドガーは女をなんとか振りきって、ドアに向かって走って行った。