★小説〜伯妖連載〜★

□このままずっと……
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「リディア、ピクニックに行かないか?」

朝食の席で、突然思いついたようなエドガーからの誘いに、リディアは困ってしまった。

「え……と、あのね、エドガー…」
「気が乗らない」
「そうじゃなくて、午後からは乗馬とフランス語のレッスンがあるから無理だわ」
「また日を改めて来てもらえばいい。それが無理ならケリーにまた、受けてもらえばいいじゃないか」

またケリー?
彼女はあくまでもリディアの待女で、代役ではない。

「ケリーにだって仕事があるわ。それに忙しい時間をさいて来てもらっている先生にも悪いし……」

しばらく考え込んでいるみたいだが。

「じゃあ、ケリーは諦めるよ」

その言葉に胸を撫でおろしたリディアだが。
エドガーは、そばに待機をしているレイヴンを呼び寄せると、今度は耳打ちをした。

「承知致しました」

レイヴンは軽く頭をさげると、ダイニングルームから出ていった。
なんだか嫌な予感がする。
ニコニコ笑っているエドガーに、おそるおそると尋ねた。

「まさか……とは思うけどレイヴンに、あたしの代わり頼んでいないわよね?」

ナプキンで口を拭っていたエドガーは、オーバーな表情をリディアに見せた。

「酷いな。いくら僕でもレイヴンにそんなことは頼まないよ。大丈夫。悪いようにはしないから」

エドガーはウインクをして、悪戯っ子の笑顔をリディアに向ける。
そんなエドガーを見て少しホッとした。
最近のエドガーはなんだか時々、彼らしくない行動をすることがある。
まわり対しての接し方にも変化がみえてきた。
このままでは、今まで彼が築き上げてきたことが無駄になってしまう。
例えそれで皆がエドガーから離れていくようなことがあっても、リディアは彼のそばから離れるつもりはない。
ずっとそばにいると約束したから。

「ピクニック……行くわ。今日はめずらしく外は暖かいし、こんな日にレッスンだなんてもったいないものね」

リディアはフォークとナイフを皿の上に置き、紅茶の入ったティーカップに
口をつける。

「きみがそう言ってくれてよかった」

リディアに向かって微笑む彼も同じように、カップを口につけていた。
リディアと同じようにしていてもエドガーがすると優雅だ。
別に目立ったことをしているわけではないが、そんな彼にどうしても目がいく。
リディアのことをいつも綺麗だと褒めてくれるが。
自分のどこに魅力があるのか。
今だにリディアにはわからなかった。




                   
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