★小説〜伯妖連載〜★

□そばにいるだけで……
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“僕にはきみを、幸せにはできない”

そう言ってあなたは、あたしの指からムーンストーンを、はずした。
そ……う……。
あなたに最初に、別れを告げたのは、あた……し……。
これは彼が出した[返事]なのだ。
頬に濡れたものが流れ落ちる。
雨が、降ってきたのかしら?
でも、だんだんと視界がぼやけてくる。
……あたし、泣いているの……?
細く長い指がそっと、涙をぬぐう。
こんな時まで、優しくしないで……。
彼女は灰紫の瞳から、目をそらし、顔を横に向けた瞬間、かすかに唇に、彼の唇が触れる。

“さよなら、僕の妖精……”

その言葉がずっと、耳に残っていた。
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