★小説〜伯妖連載〜★

□そばにいるだけで……
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「リディアー!ここだよー、ここー!」

ひとつにくくったコーヒー色の髪の少女が、両手を振って声をはりあげている。

「ロター!」

ロタが勢いよく走ってきて、リディアに抱きつく。
ここは、ロンドンの港。
3年振りに帰ってきたロンドンは、自分を温かく迎えてくれている様で、ほっとしたせいか、足元がふらつくが、なんとか立つ。

「おかえり、リディア。長旅で疲れただろ。あっちで馬車待たせているからさ」
「ありがとう、ロタ」
「すみません。わざわざ迎えにきていただいて……」

父は申し訳なさそうに言って、ぼさぼさ頭に手を置く。

「気にしなくていいよ。あたしも早く、リディアに会いたかったからさ」

「この前、マッキール家の別荘で会ったばかりじゃねえか」

ロタは暇があれば、別荘に遊びにきて、2週間ぐらい滞在して、いつも帰っていく。
でも、そのお陰で3年間、リディアは退屈せずにすんだのだ。
ロタはニコをひょいとつまみ上げ、おでこを指ではじいた。

「いってー!何するんだよ!」
「一言余計なんだよ。このぐうたら猫が!」
「猫じゃねえ!おれは紳士だ!」

1人と1匹が言い合いを始めた。

「ちょっ……ちょっと2人とも……」

リディアが止めに入ろうとした時、また足元がふらついて、リディアはそのまま目の前が暗くなっていくのを感じ、みんなが自分の名前を呼んでいるのだけが聞こえていた。
エドガーに、会いたい……。
そこで記憶は、途切れた。
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