★小説〜伯妖現代版〜★

□6〜好きなの?〜
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「今度のターゲットは、10代〜20代に絞り込んで値段も安く設定したいと思っています。そこで長期保存ができる、プリザーブドフラワーを使った宝石をと、考えています」

エドガーは企画書をフレデリックに渡す。
その企画書を見て、フレデリックは少し、驚きの声をあげる。

「これ……、きみが考えたのなら、よく出来ているよ。しかし、社長からのOKはもらっているのかな?」

エドガーは黙り込んでしまった。
その表情を見て、フレデリックは、ふうっと息を吐いていた。

「そうだろうと、思った。ここへきみを呼んだのは僕だけど、まずは社長にOKをもらってきてからにした方がいい」

エドガーの目の前に、企画書が置かれた。
確かにフレデリックの言うように、父からの承諾は得ていない。
エドガーは父に内緒で、この企画をすすめてきたのだ。
今まで父の仕事の手伝いはしてきたが、自分で企画をするのは初めてだった。
だがエドガーは、商品化すれば売れるという自信があった。
何度も父に話そうと思ったが、エドガーにとっては苦手な存在だ。
でも商品化するのならば、社長である父の許可がいる。

「エドガー、きみが社長に対してあまり良く思っていないかもしれないが、きみには才能がある。社長もきみの才能は認めているよ」
「父が……?」

その言葉に、エドガーは少し驚く。
今まで父からは、そんな言葉も聞いたことがなければ、そう言う素振りもみせたことが、ない。
エドガーはフレデリックのおかげで、決心がついた。

「フレデリックさん、社長から承諾が得たら、また話しを聞いていただけますか」
「それは、もちろんだとも」

昔からフレデリックのことは知っていたが、そんなに頻繁に逢っていたわけでは、なかった。
彼は基本的には誰に対しても優しい。
それは今でも、変わりはないだろう。
まさか、助言までしてくれるなんて、思わなかった。
だがそれは、エドガーのことを心配してくれて言ってくれたのかと思うと、ありがたいことだ。

この人が自分の父親だったら、どんなによかったか。
エドガーは、初めてフレデリックに逢った時から、何度もそう思った。
こんこんと、ノックの音が聞こえて、リディアがお茶を持って入ってきた。

「パパ、もうすぐ夕食が出来るわよ」

そう言って、彼女はエドガーの方を見る。
彼女の金緑色の瞳には、早く帰ってと、エドガーに訴えているのが分かる。
この瞳に見つめられると、弱いな……。
今日は仕事の話しをしに来ただけで、リディアを困らすために来たわけではないから、エドガーは早く帰った方がいいかなと思い、ソファから立ち上がった。

「それでは僕はこれで、失礼いたします」

彼女のほっとした表情が、すれ違いざまに見えた。
その時、フレデリックが、声を掛けてきた。

「よかったら一緒に、夕食でもどうかな?」

リディアの表情はまた、すぐに変化した。
いや、彼女だけでなく、エドガーもこの言葉に驚いていた。





                                   
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