★小説〜伯妖現代版〜★

□6〜好きなの?〜
3ページ/10ページ

     
まったく、パパったら!
どうしてあんな奴に夕食、食べていけって言うのよ……!
父が引き止めたりしなければ、エドガーはあのまま帰ったはずだ。
リディアは彼にできるなら一刻も早く、この家から退散してもらいたかった。
エドガーのことが、嫌いだから?
確かに、あんな女たらしは、好きではない。
それに最近彼が近くにいると、なんだか調子が狂ってしまう。
リディアはオーブンから、焼きたてのハーブチキンを大皿にのせた。

「このチキン、テーブルに持って行くよ」
「ええ、お願い……って、どっ……どうして、ここにいるの!」
「どうしてって、夕食ごちそうになるんだから、手伝うのは当たり前だろ」

そう言ってそのまま、テーブルに持って行った。
キッチンの向こうでは、すでにお酒を飲んでいる父がエドガーと2人、楽しそうに会話をしている。

「きみみたいな息子が、欲しかったな」
「僕も……、あなたが父親だったら、どんなによかったか……」

淋しい目……。
一瞬だけ見せた表情。
こんな彼を見たのは、はじめてだ。
だが次の瞬間、またいつもの笑顔にエドガーは、戻っていた。
あまりにも素早い切りかえに、リディアはさっき見た彼の表情は、自分の見間違いだったのかと、錯覚したほどだった。
今日はエドガーが運ぶのを手伝ってくれたおかげで、いつもより早く席に着くことができた。
そしていつもの習慣で、指を組み合わせて、リディアは父と2人でお祈りをはじめる。
エドガーも同じように、お祈りをはじめた。
そしてそれが終わると、いつものように父のおかずを小皿にのせて、次は自分の分をのせようと思った時、目の前におかずが盛られた小皿が置かれた。
エドガーの腕が目の前に見えて、リディアはうつむいたまま、口を開く。

「あ……、ありがとう」
「どういたしまして」

なんだか、照れくさい。
おまけに食べるペースまで、狂ってしまう。
そんなリディアの気持ちを、知ってか知らずか、エドガーはフレデリックと会話をはじめていた。

「ところでフレデリックさん、リディアさんを別荘にご招待をしたいと思っているのですが、許可していただけますか?」

その話しを聞いて、喉がつまり咳き込む。
エドガーはそんなリディアを横目で確認をして、反応を楽しんでいるのだろうか。
くすりと、笑った。
ちょっ……ちょっと、何よ。
何なのよ、今の態度は!
一瞬、頭に血が上昇したが、でも父が許すわけがないと思ったので、リディアはなんとか冷静になった。

「他には誰が、来るのかな?」
「はい、リディアさんと仲がいい友達も招待していますし、後から父も来る予定になっておりますので、フレデリックさんもご一緒にどうですか?」

リディアと仲のいい友達といえば、ロタのことだ。

「せっかくだが、仕事が立て込んでて行けるかどうかも約束が出来ないから。リディアせっかく誘ってくれているんだから行ってきなさい」

え……?
ちょっとパパ!
そんなにあっさりとOK出さないでよ。

「それは残念です。リディアさんが別荘にいる間は警備も万全に整えていますので、ご安心下さい」

エドガーはにっこりと、リディアと父に笑顔をみせた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ