★小説〜伯妖現代版〜★

□7〜想いを伝えたくて……(前編)〜
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どうしよう……。
どこをどう行けばいいのかわからないリディアは、その場を立ち尽くしていた。
とらあえず別荘に向かって歩いていけばいいだろうと思って、建物を目印に歩いていたつもりが。  
歩けば歩くほど、遠ざかって行くような気がしてきた。

「え……っと、次は……」

右左どちらに行こうかと迷った時、地面に次から次へと水滴がたまる。

「やだもう……、こんな時に限って雨が降るなんて」

雨宿りができる所がないか足を進めようとした時、つまづいてそのまま地面にこけてしまう。

「いっ……たあ」

膝からは血は出ていたが、それほどの痛みは感じなかったので起き上がろうとした時、左足首に激痛が走る。
どうやら足首を捻ったみたいだ。
このままここにいても雨に濡れて風邪を引くだけなので、リディアは片足を引きずりながら雨をしのげる場所を捜す。
歩きながらリディアは彼のことを思い出していた。
あの時のエドガーの表情を今でも覚えている。 
あんな酷いこと言われたら、いくら彼でも怒るだろう。
当然のことだ。
おまけに、こんな可愛くない女の子から言われたら余計に、腹も立つことだろう。
昔からリディアは自分の容姿には自信がもてなかった。
鉄錆色の髪。
魔女みたいな目。
小さい頃から散々陰口で言われてきたから、余計にそう、思ってしまう。
自分も母みたいな金髪の髪だったら。
瞳もブルーだったら。
何度そう、思ったことか。
そうこうしているうちに雨宿りができそうな場所を見つけた。
足を引きずりながらもなんとか、たどり着く。
地面が濡れていないからこの木の下でしばらく雨が止むまで、雨宿りをすることにした。
リディアはそのまま座り込んで、木にもたれかかる。
本当についていない。
携帯を掛けようとしたら充電切れだし、足首は捻るし。
それに何よりも彼を怒らせてしまった。
はあっと、ため息をつきながら体をうずくまっていると、自分の名前を呼ぶ声が耳に入る。
その声は段々と近くなりリディアは、ぱっと、顔をあげる。

「リディア!」

馴染みのある人物の顔を見るとリディアは、ほっとした。




                                    
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