★小説〜伯妖現代版〜★

□10〜彼女達の苦悩な日々(後編)〜
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リディアから先に食堂に行っててと言われてキャスリーンは、わかったわと、笑顔で彼女に手を振ったが。
リディアの姿が見えなくなると、表情を一変した。
ふん、やっぱり嘘をついたわね。
昨日一緒に授業をさぼったことは、自分とエドガーの秘密にしておきたいつもりなのだろうか。
その考えがますます腹が立つ!
それにリディアのことを考えたら、なんだかいらいらと、してきた。

「……キャスリー?」

名前を呼ばれて、はっとした。

「あ……えっと、何?」

みんなの前では笑顔を向ける。
キャスリーって優しいのねって、言われる人でいないと。
自分の今思っていることを見破られないようにしないと……。
食堂に入って席を探していた時、ちょうど授業で同じ科目の、数名の女の子達に一緒に食べようと、声を掛けられたのでキャスリーンは2つ返事で、仲間にいれてもらうことにした。

「やだ……、話聞いていなかった。実は私達、もうそろそろロタのこと無視するのやめようと思うの」

魚を切り分けていたナイフを、危うく落としそうになった。
その言葉を聞いて、どうしてと、声をあげそうになったが、なんとか自分を抑えることはできた。

「この前あなたがみんなの前でロタと仲良くしてって、言ってたでしょ」
「そうそう。あれからあたし達も反省してね」
「ロタには今まで色々と助けてもらっているしね」

なぜか、キャスリーンの知らないところで、いつの間にかそういう展開になっているとは思わなかった。
彼女達は、目の前のキャスリーンには目もくれず、勝手にどんどんと、話を進めていく。

「ねえねえ、ホール貸しきって、今度パーティーでも開かない?」
「あ、それ賛成!」
「そうね。あたし達、ロタに対して酷いことしたもんね」

きゃあきゃあと、盛り上がっている。
その様子にキャスリーンは、テーブルをばんっと、叩きたくなった。
何が、パーティーよ!
冗談じゃない。
どうしてこんなことになってしまうのよ!
こうなったら仕方がない。
また別の作戦考えないと。
とにかく今は冷静にしないと。
喉にレモン水を流し込み、自分自信を落ち着かせた。
リディアには孤独を味あわせたかった。
友達を引き離し。
そして、彼のあの瞳を彼女から自分に向けさせること。
彼の灰紫の瞳に見つめられるのは、リディアではなく、私なのだから。
キャスリーンは席を立ち、先に寮に帰ることだけ告げると、さっさと食堂から出て行った。
そして、寮とは反対方向へと足を向けて歩いた。


                                                 
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